鳥羽市には1964年に設立された鳥羽市水産研究所という市立の研究所があります。設立当時は、黒のりやわかめ等の種苗センターとしての位置付けでしたが、現在では藻場再生や教育活動を行ったり、内閣府の地域再生計画の認定を受けた「鳥羽海藻文化革命」で中心的な役割を担ったりするなど、幅広い活動を行っています。
この研究所で、10年ほど前に開発されたのが「鳥羽工法」と呼ばれる自然石を用いたアラメの再生方法です。鳥羽工法について、鳥羽市水産研究所の研究員をしている岩尾豊紀さんにお話を伺いました。
鳥羽工法によるアラメ再生は以下の流れで行われます。
(1)成熟したアラメを海で採取します
(2)アラメの胞子をクレモナ糸という糸につけて、胞子を育成します
(3)発芽したアラメを糸ごと木片に取り付けて育成します
(4)3、4ヶ月で20cm程度までアラメが育ったところで、木片を自然石に取り付けます
(5)その自然石を水深2〜3メートルの海底に配置し、1年間自然の中で育てます
(6)最終的に、再生したい藻場に自然石を移設します。
アラメを採取してから藻場に移設するまで、1年半程度のプロセスです。
鳥羽工法で自然石を使うのはなぜでしょうか? 海底で藻を育てるための台座を沈める場合は、港湾管理者や漁港管理者などの許可を取る必要があります。その際、自然石は構造物ではないため、許可を取ることが比較的容易であるという利点があります。また、手で抱えて運べる程度の大きさの自然石を使うため、大規模な藻場再生プロジェクトに比べて、小さい範囲からはじめられ、試行錯誤がしやすいといったメリットもあります。
現在は、水深2〜3メートルの海底でアラメを1年間育てる(5)の段階まで、技術が確立しています。ただし、(6)の段階で藻場に自然石を移設した後、波や魚などによる食害の影響で枯れてしまう状況が続いているそうです。そこで今後は、アラメの移設場所にホンダワラ類も植えることで、食害生物の影響を分散させながら、ホンダワラとアラメの両方が茂る豊かな藻場を増やすことを計画しているとのことです。
まだまだ発展を続ける鳥羽工法の試み、参考になります!
鳥羽市水産研究所
https://www.city.toba.mie.jp/suisan/index.html
鳥羽市水産研究所のフェイスブックページでは活動のようすがご覧いただけますhttps://www.facebook.com/tobacitysuisankenkyujoneo