東アジアを含むインド西太平洋地域は、世界で最も多種多様なマングローブ生態系を有し、その分布域は気候変動に伴い徐々に拡大・移動しています。
この現象をより詳しく理解し、健全なマングローブ生態系を維持する方法を学ぶために、韓国の国立森林科学研究所(NIFoS)は、国際林業研究センター・国際アグロフォレストリー研究センター(CIFOR-ICRAF)、インドネシアの国立研究革新庁(BRIN)、バリ島デンパサールのウダヤナ大学らと共同で、韓国・済州島とインドネシア・バリ島の2つの島において横断的研究を行っています。
バリ島デンパサールで2023年3月27日、第1回国際シンポジウム「Beyond Green Carbon」が開催され、「ブルーカーボンによる気候変動への適応と緩和:2つの島の横断的研究」をテーマに、これまでの両島の取り組みや今後の展望に関する発表が行われました。
朝鮮半島は、亜熱帯気候帯の最北端に位置しています。最南端の済州島を中心に、半島には2種類の半マングローブ(真のマングローブに類似した植生で、陸地でも生育可能な種を含む)が生育しています。気温の上昇とともにその生育域が徐々に拡大していることから、韓国でも真のマングローブが根付く可能性が示唆されています。バリ島には、ングラライ森林公園(1,373ha)を中心に、現存のおよび植林による健全なマングローブ林が存在します。
NIFoSのチームは、バリ島のマングローブを調査しており、韓国への種の導入の可能性、特定の場所の特性、種の炭素吸収力および価値を評価しています。NIFoS済州島支部のリサーチ・サイエンティストでもあるプロジェクトリーダーのBora Lee氏は、「このプロジェクトの目的は、東アジアに自生するマングローブ種の炭素隔離能力を明らかにし、韓国における将来の炭素吸収源としてうまく利用できる可能性が高い種を特定することです。さらに、マングローブの生長パターンを地域、生息地条件、種ごとに特徴づけ、生長に最も適した場所での管理戦略および安定した増殖のための手順書を開発することです」と述べています。
一方、BRINのBudi Leksono上級研究員は、「インドネシアには世界全体のおよそ32%にあたる336万haのマングローブ林が有りながらも、人々の生活ニーズによってそれらが大きな脅威にさらされている状態です」と説明し、「マングローブの保全と人々のニーズを満たす経済活動を調和させる管理モデルによって、実際にマングローブ域を元の状態に戻すことが最善の道です。 我々は、すでにいくつものモデルを検証しており、済州島のチームと経験を共有することを楽しみにしています」と続けました。
<参照情報>
Cross-sectional research into mangrove blue carbon: A tale from two islands
https://forestsnews.cifor.org/82325/cross-sectional-research-into-mangrove-blue-carbon-a-tale-from-two-islands