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2026.03.05
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三重外湾漁協の挑戦――あおさのり養殖とブルーカーボンで地域の海を未来へ

三重外湾漁業協同組合について
三重県南伊勢町を拠点とする三重外湾漁業協同組合は、伊勢志摩地域の伝統的な「あおさのり養殖」を守り、未来へつなげるためにブルーカーボンの仕組みを活用した取り組みを進めている。担い手不足や地域の高齢化という課題に直面するなか、Jブルークレジット活用を通じて、持続可能な漁業と地域の活力を取り戻そうとしている。

<お話を伺った方>
三重外湾漁業協同組合(南伊勢町役場から出向中)
植村 泰士 様

 

Q. まずは、三重外湾漁協について教えていただけますか?


三重外湾漁協は、伊勢志摩・紀州(三重県南部「志摩市」「南伊勢町」「大紀町」「紀北町」「尾鷲市」の5地域)でいろんな地域の漁業協同組合が合併してできた組合なんです。本所は南伊勢町にあって、国内では過去に上位10位内、県内でも水揚げが一番多いエリアになります。私は南伊勢町役場の職員で、2024年7月から2027年3月までの約3年間の契約で三重外湾漁協に出向してきました。

三重外湾漁協の「環境配慮型あおさのり」を通じたブルーカーボンの取り組みについては、前任の岡さんが、取りまとめや委員会の立ち上げまで全て取り組んでいました。

 

あおさ養殖の漁場

 

Q. どのような背景や想いで、取り組みを始められたのでしょうか?

もともと伊勢志摩のあおさのり養殖は歴史ある漁業なんですが、海の変化でだんだん厳しくなってきたんです。さらに地域の高齢化や人口減少も進んでいて、あおさのり養殖そのものが衰退してきています。南伊勢町も一時は人口が一万人以上いましたが、いまは一万人を切っており、高齢化しています。目に見えて人口が減っている状況があります。

伝統的なあおさのり養殖の担い手も少なくなっている中で、岡さんとしては「このままではいけない、どうにかできないか」という想いを持っていらっしゃいました。そんな折に、県や国の職員からJブルークレジットの話があり、岡さんを中心に、三重外湾漁協としてブルーカーボンに取り組みを始めました。

 

委員会のようす

 

Q. あおさのり養殖には、どのように取り組んでいらっしゃいますか?

三重外湾漁協のあおさのり養殖は人工的に種付けするのではなく、ネットを張って自然に種が付着するのを待つ方法を取っています。そのため、人為的にあまり手を加えない方法で養殖を行っています。

重要なのは、食害対策ですね。あおさのりは魚や鳥に食べられてしまうので、古くなった漁網を再利用し、漁網を張りめぐらせて食害からあおさのりを守っています。収穫量に直接影響するポイントなので、人の手で作業を行いながら、漁網を再利用することで環境にも負荷をかけない方法を取っています。

 

Q.Jブルークレジットの認証については、どのように取り組まれたのでしょうか?

2018年7月から2021年6月までの3年間を遡って申請して、令和6年に認証をいただきました。そこに至るまでは本当に大変だったと聞いています。漁業者さんや行政とどう調整するか、どのように取り組みを進めるか、岡さんがほぼ一人で担ってこられたんです。

計測については、あおさのりを一枚ずつ計測するのは大変な労力がかかります。そこで、漁網にかけている保険のデータから、漁場にいくつの漁網があるのかを測るようにしました。そして、実際にあおさのりの乾燥重量を目安にして、CO2の吸収量を算定しました。

CO2吸収量の根拠をどのように論理づけるか、実際にどのように算定を進めるのか、申請を行う過程での準備など、認定されるまでは大きな苦労があったと思います。

 

発行証書交付式

 

Q. Jブルークレジットはどのように販売されているのですか?

まずは市長に話を持っていって、市長も「カーボンクレジットを推進しよう」ということで協力してくれました。地元の土木建設業者さんをはじめ、9割ほどは購入していただけたんです。

その後、購入頂いた業者さんとはあおさのり養殖を継続させていくためのノウハウを交換したり、取り組みの認知度を高めるための交流会も開催しました。また、購入いただいた企業の方々に来てもらって、あおさのりを食べてもらったり、環境配慮型あおさのりの取り組みをより理解してもらえるよう対話したり、これから取り組みを進めるための繋がりを育みました。単なる購入依頼で終わるのではなく、理解してもらって関係を深めることを意識した活動を行っています。

また、購入業者様にもメリットがでるように、機会があるごとに購入業者様の社名を公表し、環境にやさしい業者様であることを知らしめるようにも取り組んでおります。

交流会で関係性が深まったこともあって、企業から「こういう取り組みをしませんか」とご提案をいただいたりもしています。実際にJブルークレジットを購入いただいた2企業から、提案をいただいています。

 

購入事業者と地元漁業者の交流会

  

Q. 貴重なお話を伺わせていただきありがとうございます。これから目指す未来について教えて下さい。

人口減少や少子高齢化によって、伊勢志摩のあおさのり養殖はきびしい状況があります。新しい担い手もなかなか増えてはいません。
まずは、あおさのり養殖の広報活動や認知度の広がりを持たせていくことで、あおさのり養殖に興味を持つ人が増えていくこと、あおさのりを購入することが環境保全につながるという思いの人が増えていくことが、漁業者さんへの支援になります。

まずは地元の小中学校に広めることから始めたいですね。給食であおさのりを食べてもらったり、漁業者を呼んで課外授業をしたりして、子どもたちに「自分の住む地域でこういうことをやっているんだ」と知ってもらう。そうすれば将来の担い手にもつながるはずです。あおさのり養殖に関する活動を、地道にやっていきたいと思っています。

また、企業の方々と一緒に広報やPRに取り組むのも大事にしています。最近は、購入企業から「こんな協力ができますよ」という提案もいただいているので、取り組みの輪を広げていきたいと思っています。

地域の海を守りながら、漁業を続けていける仕組みをつくるのは本当に大事なことです。ブルーカーボンを通して、あおさ養殖を知ってもらう人や応援してくれる人が増えていけば、漁業者の支えにもなるし、地域全体の力にもなるはずです。

ブルーカーボンの取り組みを軌道に乗せられるよう、頑張りたいと思っています。



編集後記
人口が減少し、少子高齢化も進むなかで、地域の伝統を守りながら活動を進める三重外湾漁協の取り組みに、勇気をもらいました。岡さんというキーパーソンから始まった取り組みによって、ブルーカーボンの取り組みの輪が広がっているお話しに、希望をいだいた取材でした。
貴重なお話を伺わせていただき、ありがとうございました。

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