理研ビタミン株式会社は2022年5月25日、子会社である理研食品株式会社の佐藤陽一氏(理化学研究所 仁科加速器科学研究センター生物照射チーム 客員研究員)、長崎大学海洋未来イノベーション機構のGregory N. Nishihara教授、琉球大学 理学部海洋自然科学科の田中厚子助教らの研究チームが、海水中の溶存酸素量の計測データを用いた解析手法を活用し、海藻類による炭素固定能力の試算に成功したと発表しました。
研究の背景
海藻養殖場は、ブルーカーボン生態系として重要な役割を果たすと期待され、世界的に海藻養殖場の拡大を支持する声が高まっていますが、適正な手法で計測された調査事例はこれまでほとんどありませんでした。
今回の研究では、天然藻場と磯焼け海域(長崎県)、海藻養殖場(宮城県松島湾と岩手県広田湾 のワカメ養殖場、沖縄県本部町のオキナワモズク養殖場)の自然環境下における溶存酸素量の連続記録から、炭素の純生態系生産量を計算し、炭素固定能力をこれまでの報告よりも高い精度で推定することに成功しました。
研究成果
長崎県の天然藻場はシーズンの半分以上の期間で炭素固定の場として機能しており、宮城県のワカメ養殖場も同程度でした。一方、沖縄県のオキナワモズク養殖場や岩手県のワカメ養殖場は炭素固定の場として機能する日数が比較的少なく、これには地域差や生産過程が関係していると考えられます。
今後の期待
本研究では、世界的に注目されている海藻類の炭素固定による「ブルーカーボン効果」の定量化を実現し、海藻養殖や藻場保全が持つ温室効果ガス削減効果の評価に寄与する知見が得られました。こうした成果を、海藻養殖のカーボンオフセット効果の定量化による海藻産業の付加価値向上と、将来的なカーボンクレジット時代に向けた新産業の創出に活用することが期待されています。
<参考情報>
海藻類のCO2固定能力の試算に成功~ブルーカーボンに関する共同研究成果を発表
https://www.rikenvitamin.jp/news/news_file/file/220525.pdf