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2023.09.05
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ミシガン大学:カリブ海の海草藻場の経済効果を算出。年間2,550億ドルに。

貴重ながら脅威にさらされている海洋生態系の議論では、マングローブやサンゴ礁に焦点が置かれることが多く、海草はあまり注目を集めていないといいます。

しかし、ミシガン大学主導でおこなわれた新たな研究の結果、海草の生態系は、世界における保全課題の中でも最重要項目に値することが示されました。

2023年6月21日付学術誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」に発表された同研究は、カリブ海全域の海草がもたらす多くのサービス(暴風雨からの保護、魚種の生息地や炭素貯留など)に価値をつけた初めての研究で、その数値は素晴らしいものであるとしています。

新たに入手可能となったカリブ海の海草分布データを用いて、研究者らはこの地域における炭素貯留量を推定し、生態系サービス全体と炭素貯留量の経済評価を算出しました。

その結果、カリブ海の海草藻場(88,170㎢)には約13億トンのCO2が貯留されていると見積もられました。表面積では、世界の海草藻場の最大半分を占め、その炭素貯留量は世界中の海草による貯留量のおよそ3分の1との推定です。

そして、これらの海草生態系が社会に提供するサービスをすべて価値化すると、年間2,550億ドルとなり、そのうち炭素貯留は883億ドルと推定されました。

カリブ海地域で海草の最大のシェア(61%)を占めるバハマ諸島だけでみてみると、海草がもたらす生態系サービスは、2020年の同国GDPの15倍以上の価値があるとしています。

「本研究は、カリブ海の海草藻場が、その面積、炭素貯留量、社会に提供する経済的サービスの価値において、世界的に重要であることを初めて示したものです。この研究結果は、気候変動との戦いにおいて欠かせない仲間でありながら、絶滅の危機に瀕している世界的に重要な海草生態系を保全・保護することの重要性を強調するものです」と、ミシガン大学生態・進化生物学部博士課程の学生であり同研究の主執筆者であるブリジット・シャイカは述べています。

そして、こうした生態系を優先的に保全するには、その損失を最小限に抑え、面積を拡大し、劣化を回復させるなどのプロジェクトを利用して、世界のカーボン市場に組み入れることが一つの方法であるとしています。

さらに著者らによると、「重要なことですが、海草藻場の劣化はしばしば浸食や堆積物の再懸濁を引き起こすので、それらが海草の損失の増加や、堆積物に貯留された炭素の放出といった正のフィードバックを起こす可能性があります。ブルーカーボン・ファイナンス(ブルーカーボンへの資金供与の仕組み)は、国際社会がこうした重要な生態系の保全と保護のために投資を行う仕組みとなる可能性があります」。


<参照情報>
Caribbean seagrasses provide services worth $255B annually, including vast carbon storage, study shows
https://news.umich.edu/caribbean-seagrasses-provide-services-worth-255b-annually-including-vast-carbon-storage-study-shows/

The natural capital of seagrass beds in the Caribbean: evaluating their ecosystem services and blue carbon trade potential
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2023.0075

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