WWFカナダは2023年6月8日、世界海洋デーに際して、カナダの沿岸域のブルーカーボン生態系に関する、カナダ初の報告書を発表しました。
最新の知識を盛り込んだこの報告書は、学界、NGO、政府、その他のセクターから40人以上の専門家が参加し、協力して執筆やレビューを行って作成されました。沿岸生態系の炭素のダイナミクス、保全のための資金調達、先住民の法律、政策と規制などのトピックを取り上げています。カナダではブルーカーボンの研究はあまり進んでいないため、生物多様性と気候変動という2つの危機に対処する上で、この報告書が発表されたことは時宜に適っている、としています。
ブルーカーボンは比較的新しい研究分野ですが、炭素を蓄積し、重要な野生生物の生息地を提供する沿岸生態系については、すでにかなりの量が失われていることがわかっています。1880年以降、世界中の海草の19%が失われており、カナダ大西洋岸では調査対象となったアマモ場の31%が縮小しています。ブリティッシュコロンビア州では、塩性湿地の70%が消滅しています。
24万キロメートルを超える世界最長の海岸線を持つカナダにとって、ブルーカーボン生態系は特に重要です。塩性湿地、海草藻場、ケルプの森などの沿岸生態系は、野生生物にとっては極めて重要な生息地であり、ファースト・ネーション、イヌイット、メティスなどの先住民グループ、そして地域社会にとっても不可欠な存在です。
カナダでは、沿岸域に住む先住民の生活はその土地や水域と長年にわたって深く結びついており、彼らは陸域と海域のシステムが相互に関連していることも深く理解しています。ブルーカーボンを真に理解するためには、この知識を科学や政策に取り入れる必要があります。
ブルーカーボン生態系に対する人々の認識に差があることで、こうした生態系を保護し復元する活動が妨げられてきました。報告書では、カナダの現在の政策・枠組み・法律に、沿岸域のブルーカーボン生態系を組み込むことは、貴重な生息地の保護にとって必要不可欠である、としています。
WWFカナダは、沿岸生態系を保護し、管理し、復元するための先住民やコミュニティ主導の取り組みに加え、科学的研究も支援しており、今回の報告書は、この注目すべき研究分野における大きな一歩です。
<参照情報>
COLLABORATIVE REPORT ON THE STATE OF BLUE CARBON KNOWLEDGE IN CANADA RELEASED TODAY
https://wwf.ca/media-releases/collaborative-report-on-the-state-of-blue-carbon-knowledge-in-canada-released-today/
COASTAL BLUE CARBON IN CANADA: STATE OF KNOWLEDGE
https://wwf.ca/wp-content/uploads/2023/06/BlueCarbon_StateofKnowledge_Report.pdf