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2025.08.18
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スペイン・バルセロナ沖、ブルーカーボンの革新的プロジェクト「Seagrass Blue」展開中

"Posidonia oceanica" by Melina Marcou is licensed under CC BY-SA 4.0

欧州8カ国が参加する海洋観測機関EMSO ERIC(European Multidisciplinary Seafloor and water column Observatory – European Research Infrastructure Consortium)は2024年12月19日、スペイン・バルセロナ沖で自律型水中ロボットを活用した革新的な海草再生プロジェクト「Seagrass Blue」が進行中であることを発表しました。

このプロジェクトは、海洋が抱えるグローバルな課題に対し、ブルーカーボンの活用による解決策を示すもので、海草再生を専門とするフランスのSeagrass Blue社が主導しています。取り組みの内容は、地中海固有の海草ポシドニアオセアニカを海中で栽培し再生することです。

プロジェクトの実施拠点は、バルセロナ沿岸から4km沖、地中海西部の水深20mの海域にあるEMSO OBSEA(EMSOに参加している環境研究のためのスペインの観測施設)です。そこには、3m×3mのモジュール型の浮体式養殖ユニットがいくつか設置され、海草の養殖が行われています。この海域は、海洋環境の変動が大きいため、こうした新しいプロジェクトには理想的な自然の実験場とされています。

ポシドニアオセアニカは、地中海の生態系において極めて重要な役割を果たす海草の一種です。広大な海草群落を形成し、様々な海洋生物の生息地を提供するとともに、海底の堆積物を安定させ、水の透明度を高める役割も担っています。しかしながら、沿岸開発や気候変動など人間活動の影響により、この草原が深刻な脅威にさらされていることから、海草の再生に向けた取り組みを支援することは極めて重要であるとしています。

Seagrass Blue社による、海草を再生させる方法は従来の再生技術とは大きく異なり、より大規模な展開が可能で、技術的にも進んだ手法が採用されています。Marine Beeと呼ばれる自律型の水中ロボットを導入しており、これにより再生プロセスにおいて人間活動による環境のかく乱を最小限に抑えつつ、より広範囲な海草の再生を可能としています。

Marine Beeは、ポシドニアオセアニカの健康状態や生育の様子、さらには炭素除去の効果をモニタリングすることができるため、再生プロセスの最適化に役立つデータを提供したり、企業や産業界にとって持続可能な新しいカーボンオフセット手段を提供したりすることができます。

「この革新的な手法は科学界にとって大きな可能性を秘めています。その応用範囲は広く、現在の再生技術が抱える限界やコストの問題を克服することを目的とした、再生および水産養殖に関する研究プロジェクトに及びます。この自律型水中ロボットを活用した精密なモニタリングを導入することは、環境保全の分野においても画期的な取り組みです」と、Seagrass Blue社の最高執行責任者クリス・ルイス氏は語っています。

このプロジェクトが成功すれば、海洋生態系の再生に向けた大規模なソリューションの開発につながり、生物多様性の向上、漁業管理、沿岸保護といった分野への応用が期待されるとしています。

今後の取り組みとして、Seagrass Blue社は、来年(2025年)には10ha分の浮体式養殖ユニットと10台のMarine Beeを使って、大規模な海草養殖と炭素隔離への効果についてさらに理解を深めていくとしています。

<参照情報>
Seagrass Blue: an innovative approach for ocean restoration within EMSO Physical Access
https://emso.eu/2024/12/19/seagrass-blue-an-innovative-approach-for-ocean-restoration-within-emso-physical-access/

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