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2022.11.10
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北海道大学/フィリピン:収入源の多様化やNGOの取り組み、ブルーカーボン生態系に依存する地域の社会脆弱性を改善

「ブルーカーボン生態系サービスに依存している地域の社会的脆弱性は、生計手段の多様化やNGOの取り組みによって改善する可能性がある」ことを示す論文が、北海道大学の研究者らにより、2021年8月に発表されました。

この研究はフィリピンのブスアンガ島の10の沿岸コミュニティを対象に行われたものです。東南アジアの沿岸地域は、海草生態系やマングローブ生態系を活用して、食料を調達したり、生計を立てたりしています。しかし、東南アジアでは、ブルーカーボン生態系が、世界よりも速い速度で失われています。そのため、社会的脆弱性を回避することがコミュニティにとって非常に重要です。

研究では、海草藻場の生態学的評価や、漁業者の水揚げ調査、家族へのインタビューなどを使用して、「暴露(違法伐採や沿岸開発など、ブルーカーボン生態系への脅威)、感受性(ブルーカーボン生態系の地域的重要性など)、適応能力(プルーカーボン生態系の損失による将来的な影響を回避するために利用可能な資産)の3つの観点に基づいて、社会的脆弱性との関連を分析しています。

その結果、以下のようなことが明らかになりました。

・海草生態系での漁業のほうが、マングローブ生態系での漁業よりも、ブルーカーボン生態系の損失や劣化の影響を受けやすい

・社会経済的な感受性は、漁業や観光収入への依存度が高いコミュニティで高い

・適応能力が低いコミュニティは、教育水準が低く、漁業に代わる収入源がほとんどなかった。その一方で、多様な収入源があり、NGOや住民組織からの情報にアクセスできるコミュニティでは、適応能力は高かった

この研究をおこなったAngela Quiros博士は「私達の研究結果は、教育を受けやすくし、NGOの活動を増やす必要性、および脆弱な海草藻場やマングローブ生態系での漁業に対して公平な漁業管理を始める必要性を示している」と述べています。

参考文献
https://www.global.hokudai.ac.jp/blog/linking-humans-with-blue-carbon-ecosystems/

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