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2025.03.31
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インドネシア、膨大なブルーカーボンの可能性の活用を目指し、測定マニュアルの作成に着手

Photo by Phidju Sagala/CIFOR-ICRAF is licensed under CC BY-NC-SA 4.0

インドネシア政府は2024年11月1日、「マングローブのブルーカーボン測定マニュアル」と「マングローブのブルーカーボンプロジェクトの開発・認証の基準と方法論」の作成に着手したことを発表しました。その目的は、気候変動との闘いにおいて、同国の膨大なブルーカーボンの可能性を活用することです。

この文書作成の準備段階として、2024年10月にさまざまなステークホルダーが集まり、同マニュアルに関するフォーカスグループのディスカッションが行われました。

広大なマングローブ林を有するインドネシアは、世界全体の気候変動への取り組みにおいて極めて重要な役割を担う独特の立場にあります。世界中の国々が、炭素排出を緩和するためにブルーカーボン生態系に注目する中、インドネシアは自国の自然資産を十分に活用する態勢を整えています。

FOLU Net Sink 2030(仮訳:インドネシアの林業とその他の土地利用のネットシンク2030)のワーキングチームのチーム長Ruandha Agung Sugardiman氏は、インドネシアの野心的な気候目標について概要を説明し、FOLU NetSink 2030のイニシアチブは、2030年までに林業と土地利用の部門による炭素吸収量が排出量を超えることを目指すとしています。

しかし、インドネシアのマングローブには将来性があるにもかかわらず、この生態系のブルーカーボンのストックに関する包括的なデータは不足しています。「どのマングローブが最も多く炭素を貯留しているのか、私たちはまだ正確に把握していません」とSugardiman氏は認めています。「そのため、このマニュアルは、インドネシアが供給していると私たちが言っているブルーカーボンは机上の空論ではなく実際のものであるということを世界に対して証明するために不可欠であり、詳細な地図でそれを裏付ける予定です」

この文書作成の取り組みに協力している国際林業研究センター・国際アグロフォレストリー研究センター(CIFOR-ICRAF)の主席科学者であるDaniel Murdiyarso氏によると、ディスカッションで研究チームは、ブルーカーボンの取り組みを進めるための三つの要素について共有しました。それは、マングローブのブルーカーボン測定マニュアルのドラフト、インドネシアでのブルーカーボンプロジェクトの開発・認証の基準と方法論のドラフト、そして、i-Mangroveというマングローブの喪失と再生の機会に関するデータを収集する革新的なオンラインプラットフォームです。

新しいブルーカーボン測定マニュアルは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のガイドラインを順守し、インドネシアのマングローブのブルーカーボンの測定を標準化することを目指しています。また、IPCC湿地ガイドラインも採用しており、透明性・正確性・完全性・比較可能性・継続性の原則を確保しています。データはさまざまな政府筋から収集しており、野心的なFOLU Net Sink 2030の目標に役立てるために、同国の排出要因と関連付けられています。

Murdiyarso氏は、マングローブのブルーカーボンプロジェクトの開発・認証の基準と方法論のドラフトについても、概要を説明しました。このドラフトでは、以下の三つの重要な要素を強調しています。

  1. National Registry System(仮訳:国内登録制度)とIndonesian Emission Reduction Certificate(仮訳:インドネシア排出削減認証)を含むインドネシアの法的規制との調整
  2. 排出量と削減量のベースラインを算定するための方法論
  3. 国際基準のインドネシアの枠組みへの統合

i-Mangroveに関しては、豪ジェームズ・クック大学の熱帯水・水生生態系研究センター(TropWATER)の上級研究員であるSigit Deni Sasmito氏が次のように説明しました。「このプラットフォームは、インドネシアのマングローブのブルーカーボンに関連する気候行動の実践に役立つものです。その主な特徴は、2001~22年の間に同国で、マングローブの再生の可能性がある地域を特定し、マングローブの喪失地域を地図化していることです。さらに、このアプリは、影響を受ける地域のための水文地形学的な情報も提供しています」

インドネシアのシティ・ヌルバヤ前環境林業大臣は、このマニュアル作成における協働の取り組みを称賛しており、これが実践者、研究者、政策策定者にとって貴重なリソースとなることを期待しています。

<参照情報>
https://forestsnews.cifor.org/89959/blueprint-for-climate-action-indonesias-mangrove-manual-sets-global-standards

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