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2025.06.26
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南極オキアミの炭素貯留能力、マングローブなど沿岸の海洋植物に匹敵

"Antarktický krill" by Norkrill is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

英国のプリマス海洋研究所は2024年9月19日、「南極オキアミという一つの種がマングローブや塩性湿地、海草といった主要なブルーカーボン生息地と同等量の炭素を貯留している」という新しい研究結果を発表しました。

この研究論文の共著者である英国南極研究所のシメオン・ヒル(Simeon Hill)博士は「この研究は、私たちが人間として、はるか遠い場所の小さな生き物とどのようにつながっているかを示しています。私たちは、その生き物の炭素除去に関する活動から恩恵を受けているにもかかわらず、気候変動を促進する自らの活動によって、その生き物に影響を及ぼしています」と語っています。

海洋では、沿岸の海洋植物だけでなく、沿岸から遠く離れたところでも、一つの方法としてオキアミのような動物によって、炭素が貯留されています。オキアミは小さく、体長およそ6センチメートルですが、南極海では、極めて膨大な個体数が生息しています。

オキアミは、光合成によって大気中から炭素を取り込んでいる植物プランクトンを餌としているため、フンや脱皮した殻に含まれた炭素は、深海に沈み、そこで非常に長期間とどまっている可能性があります。

この新しい研究によると、南極オキアミは、少なくとも年間2,000万トンの炭素を深海に閉じ込めており、それは炭素価格に応じて、40億~460億ドルの貯留価値に相当します。

オキアミが炭素を貯留する力は、膨大な個体数から生まれるものです。最大30兆もの個体が群れを形成し、素早く沈む多くのフンの塊やその他の老廃物をシャワーのように降らせます。

同研究によって、こうした老廃物が少なくとも100年間貯留し続けるために到達しなければならない水深は、驚くほど浅い(平均水深381メートル)ということも明らかになったため、それらの潜在的な可能性は一層高まっています。こうした要因が相まって、オキアミが生み出す炭素貯留量は、沿岸の植物によるものと同等になっています。

南極オキアミは、極地での急速な気候変動による影響を受けているとともに、拡大する漁業の標的となっています。そのため、研究チームは、この貴重な炭素吸収源を維持するには、オキアミの個体数とその生息地の両方を保護する必要があると主張しています。

炭素貯留という観点からこの生態系を高く評価することは、気候に関する目標を達成すること、および保全政策に炭素を含めることがいかに重要であるかを強調することになります。

この研究結果は、英学術誌「Nature Communications」に2024年9月8日に掲載されています。研究は、インペリアル・カレッジ・ロンドンが指揮し、エクセター大学、英国生態・水文センター、英国南極研究所、プリマス海洋研究所、デンマーク工科大学の協力のもと、行われました。

<参照情報>
Plymouth Marine Laboratory
Antarctic krill can lock away similar levels of carbon as seagrass and mangroves
https://pml.ac.uk/news/antarctic-krill-can-lock-away-similar-levels-of-carbon-as-seagrass-and-mangroves/

「Nature Communications」
Antarctic krill sequester similar amounts of carbon to key coastal blue carbon habitats
https://www.nature.com/articles/s41467-024-52135-6

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