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2024.07.11
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潮間帯湿地がこれまでの推定よりもさらに大きなブルーカーボン源である可能性

"Saltmarshes" by The Reef-World Foundation is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

2024年2月1日のスウェーデンのヨーテボリ大学の発表によると、マングローブや塩性湿地が炭素を隔離することでもたらされる温室効果の緩和作用について、これまで考えられていた2倍の効果があるかもしれないことが新たな研究で示されました。

潮汐作用によって冠水が生じるマングローブなどの自然生息地は、大量の炭素を取り込む生態系を形成し、気候変動の緩和に貢献していますが、その作用によってさらに多くの炭素が蓄積されている可能性があるということです。

重炭酸塩(bicarbonate)として海水に大量に流出
ヨーテボリ大学で海洋化学を研究するグロリア・ライトマイヤー氏によると、潮間帯湿地で引き潮が起きる際、炭素の多くが重炭酸塩となって沿岸海域に流出し、海水に溶解した状態で何千年もの間留まるということです。重炭酸塩はpH値を安定させ海洋の酸性化を抑制することもできるということですが、こうした働きがこれまで見過ごされてきたということです。

重炭酸塩は無害でベーキングパウダーなどにも使われており、海洋に存在しては貝殻やサンゴの骨格形成に使われています。

計測は世界中で
ヨーテボリ大学の研究者らは12カ国の科学者の協力を得て、世界中で45カ所のマングローブ湿地と16カ所の塩性湿地において、潮間帯における炭素移動を分析しました。その結果、生態系から海洋への重炭酸塩の流出量を加味すると、これらの生態系における炭素固定量が2倍になったとしています。

ライトマイヤー氏はこのように述べています。

「我々の研究では、重炭酸塩の流出量は土壌に貯留されている炭素量と同等か、さらに上回ることが示された。ということは、これらのブルーカーボン源に関する推定値はこれまで、マングローブや塩性湿地の潜在力を過小評価してきたことになる。我々の研究結果は、ブルーカーボン生態系がこれまで考えられていた以上に気候変動の緩和に効果的であることを示している。マングローブと塩生湿地の生態系を保護・再生することが、今ますます重要になっている」。

同研究に関する論文は、2023年12月11日付で英科学誌ネイチャーに掲載されています(”Carbonate chemistry and carbon sequestration driven by inorganic carbon outwelling from mangroves and saltmarshes”)。


<参照情報>
Tidal landscapes a greater carbon sink than previously thought
https://www.gu.se/en/news/tidal-landscapes-a-greater-carbon-sink-than-previously-thought

Scientific article in Nature Communications: Carbonate chemistry and carbon sequestration driven by inorganic carbon outwelling from mangroves and saltmarshes
https://www.nature.com/articles/s41467-023-44037-w

ブルーカーボンに関する取り組み事例