
神戸市は、池や湖などの淡水域が二酸化炭素(CO₂)を吸収・固定する可能性に着目し、全国でも先駆けて「淡水ブルーカーボン」の実証研究に取り組んでいます。これまで淡水域はCO₂の排出源とされるのが通説でしたが、近年の研究により一部の湖沼では吸収が確認され、地球温暖化対策としての新たな可能性が見えてきました。
この取り組みは、神戸大学や神戸高専などと連携し、日本在来の水草「ササバモ」を活用して進められています。実験では、兵庫区の烏原(からすはら)貯水池と須磨区の奥池を対象にササバモを移植し、CO₂の吸収量や炭素の固定効果を調査しています。
背景には、2010年代に市の水道水源で発生した「カビ臭」などの水質問題がありました。水草の浄化作用に期待が集まり、その中で炭素固定機能にも注目が集まるようになりました。水草は二酸化炭素を吸収して成長し、枯死後は底泥に炭素を蓄積するため、排出抑制と吸収の双方の効果が見込まれます。
実証では、ミカンネットに土とササバモを入れて湖底に設置する手法が用いられました。これは波にも強く、定着しやすい方法として評価されています。一方で、アメリカザリガニやミシシッピアカミミガメなどの外来生物による食害も確認されており、神戸市では保護対策を講じながら調査を継続しています。
神戸大学大学院工学研究科の中山恵介教授は「これまで淡水域はCO₂の排出源と考えられてきましたが、吸収機能を持つ湖沼もあることが分かってきました」と語ります。「世界中の淡水域は海洋沿岸に匹敵する広さがあり、淡水ブルーカーボンの科学的評価が確立されれば、温暖化対策の新たな柱になり得ます」と期待を寄せています。
神戸市ではこの淡水ブルーカーボンの取り組みを、「気候変動対策実行計画」に位置づけ、沿岸部での藻場整備(須磨海岸・兵庫運河・神戸空港島など)とあわせた包括的なブルーカーボン戦略として推進しています。
こうした淡水域の可能性を評価し、地域の環境保全と気候変動対策の両立を目指す取り組みが、今後も継続されていく見通しです。
<参照情報>
淡水域のブルーカーボン|神戸市
https://www.city.kobe.lg.jp/a66324/business/kankyotaisaku/ondanka/blue_carbon_freshwater.html