
環境省は2025年4月4日、藻場や干潟など沿岸域の生態系が持つ機能を活かした「里海づくり」を推進するための実践的なガイド、「ブルーカーボンを活用! 令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き」を公表しました。手引きでは、ブルーカーボンをはじめとする藻場・干潟の多様な機能についての調査・評価手法や、取り組みを継続するための工夫、現場での実践例などを整理しています。人員や予算に限りのある地域団体や自治体にとって、現場目線で役立つ指針となる内容です。
「里海」は、豊かな自然と人の暮らしが共存する沿岸域の環境像として注目されており、環境省ではその保全・再生・創出と、地域資源の持続的活用を軸とする「里海づくり」を全国で進めています。
藻場や干潟は、生物の生息環境であるだけでなく、水質浄化やCO₂の吸収・固定といった気候変動対策としての機能も備えています。さらに、教育や観光の場としても価値があり、「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現や、「30by30」目標におけるOECM(保全効果のあるその他の手法)としての活用にも期待が高まっています。
今回の手引きは、これら多面的な価値を踏まえつつ、調査や評価の方法、限られたリソースでも成果を上げる工夫、モデル海域での実践事例を紹介しています。全国的に課題となっていた「継続的な取り組みに必要な知見の不足」に応える内容となっています。
また、調査・評価に役立つ技術的なポイントに加え、関連する文献や資料も紹介されており、専門知識に触れるための入門ガイドとしても活用できます。
環境省は今後、令和7年3月に公表した「今後の里海づくりのあり方に関する提言」を踏まえ、手引きの普及を進めていく方針です。各地域の実施者が状況に応じて本手引きを効果的に活用できるよう情報提供を強化し、「戦略的な里海づくり」の全国的な推進につなげていくとしています。
また、藻場・干潟を含むブルーカーボン生態系は、地域の環境保全と経済・社会の好循環を実現する重要な要素であるとし、今後も調査・制度整備を進め、ブルーカーボンの地球温暖化対策としての活用を本格化させる考えです。
<参照情報>
『令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き』
https://www.env.go.jp/content/000305235.pdf
「ブルーカーボンを活用! 令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き」の公表について
https://www.env.go.jp/press/press_04707.html
今後の里海づくりのあり方に関する提言(2025年3月27日)
https://www.env.go.jp/press/press_04652.html