
海洋の保護・再生および海藻養殖の支援を目標とする非営利団体Oceans 2050はこのたび、海藻養殖場の下に堆積している炭素量を、世界規模で初めて定量化したことを発表しました。
これは、同団体が2020年にスタートした「The Global Seaweed Carbon Project」の一環として発表されたもので、研究成果は国際科学雑誌「Nature Climate Change」(2025年1月17日付)に掲載されました。
研究者らは、海藻養殖が、マングローブや海草といった気候変動の緩和効果で広く知られるブルーカーボン生態系と同程度の速度で炭素を堆積物中に隔離していることを明らかにしました。
海藻養殖は、ブルーカーボン戦略としての可能性が注目されてきましたが、こうした養殖由来の炭素の堆積を、調査や測定に基づき推定する文献は未だ確認されていませんでした。
Oceans 2050は、世界各地にある20か所の海藻養殖場を対象に、炭素の堆積量を定量化しました。調査対象となった養殖場は、操業年数が2年から300年、面積も1ヘクタールから15,000ヘクタールと、規模も期間もさまざまでした。
研究の結果、養殖場の下にある堆積層の厚さとそこに蓄積された有機炭素量は、養殖の操業年数とともに増加しており、最も古い養殖場では1ヘクタールあたり140トンに達していました。
また、海藻養殖に由来する炭素の年間堆積量(CO2換算)を平均すると、1ヘクタールあたり1.06±0.74トンと判明しました。この値は、堆積が進む環境下での海藻養殖が下層の堆積物に炭素を堆積する速度が、ブルーカーボン生態系の堆積速度と比べると低めの水準にあたることを示しました。ただしこの速度は、養殖の年数とともに増加していることも明らかになりました。
Oceans 2050は、このたびの研究について次のように述べています。
海藻養殖場の下に隔離された海藻由来の炭素量を定量化することで、持続可能な成長を促す新たなブルーカーボン市場への道を切り開いています。「The Global Seaweed Carbon Project」は、海藻養殖による炭素回収の役割についての理解を深めるとともに、投資を呼び込み、養殖農家の新たな収益源を生みだしながら、海洋生態系を再生しています。
Oceans 2050の最終目標は、海藻養殖を大規模に展開するために必要な条件を整えることです。そうすることで、大気中から膨大な量の二酸化炭素を取り除き、私たちの海の再生にもつながる可能性があるとしています。
<参照情報>
Oceans 2050
https://oceans2050.com/
国際科学雑誌「Nature Climate Change」
Carbon burial in sediments below seaweed farms matches that of Blue Carbon habitats
https://www.nature.com/articles/s41558-024-02238-1