いま注目されるブルーカーボンとは

海の豊かさを取り戻し、温暖化防止を進める

海に囲まれた列島・日本。
その日本各地の海から「磯焼け」「藻場の消失」「漁獲量の減少」といった報告が届きます。温暖化による水温上昇や海洋プラスチック汚染など、私たちの海は危機的な状況にあるのです。海洋の変化は、漁業者や海産物を扱う事業者、沿岸地域社会だけでなく、私たちの食にも影響を与えています。

「温暖化対策」「海の豊かさを取り戻すこと」――この2つは私たちの直面する課題の中でも最重要課題の2つと言えるでしょう。では、この2つの課題の両方に効く取り組みがあることをご存じでしたか?

それがブルーカーボンです!

大気中のCO2を吸収する海の生態系

温暖化を引き起こす大気中のCO2を減らす方法は、大きく2つあります。

ひとつは省エネや再エネシフトによってこれから排出するCO2を減らす対策、もうひとつは、すでに出てしまったCO2を吸収・回収する方法です。

これから排出するCO2を減らし、実質ゼロにしていく「カーボンニュートラル」は非常に重要ですが、いったん大気中に出てしまったCO2の寿命は数十年~数百年といわれるため、大気中のCO2を除去することも重要です。

大気中のCO2を吸収する方法としてよく知られているのが植林です。森林や陸上の植生によって貯蔵される炭素を「グリーンカーボン」と呼びます。陸上の植物と同じように、海草や海藻は生長する際に、二酸化炭素を吸収します。こうした海洋の生態系(マングローブや海藻・海草など)によって貯蔵される炭素は「ブルーカーボン」とよばれ、近年、注目されています。

海の豊かさの再生が、温暖化対策にもつながる

海洋の藻場やマングローブを再生させることで、海の豊かさを取り戻しながら、海の生態系が吸収・固定するCO2を増やし、温暖化対策にもつながるこの「ブルーカーボン」の取り組みがいま世界中で広がっています。

海の藻場(海藻や海草が茂っている場所)は、CO2を吸収するだけでなく、水質を浄化し、海洋生物の産卵・保育場として海の生物多様性を支えています。漁業や観光業などの産業、私たちの食生活にとっても、非常に重要な役割を果たしているのです。

日本でも始まっているブルーカーボンの取り組み

日本では横浜や福岡など、すでに取り組みがスタートしているところもありますが、これから始めようとしている地域、まだ検討中の地域など、その活動状況や取り巻く環境はさまざまです。

熱海のブルーカーボン・プロジェクト

私たちの地元・熱海でも藻場が減少していることを知り、未来創造部では地元の皆さんと協力しながら、藻場の再生を中心とした「ブルーカーボン・プロジェクト」を昨年から進めています。ブルーカーボン・プロジェクトは、地元に小さな循環をつくるという意味で、「地域循環共生圏」の取り組みでもあります。

日本のブルーカーボンの取り組みを広げていくために

私たちは、ブルーカーボンに取り組む実践者やさまざまな技術、制度をつなぐプラットフォームを作り、情報共有と発信、さらに、次世代への環境教育を通じて日本の藻場の再生・ブルーカーボンの取り組みを加速し、広げたいと考えています。

現時点で、「ブルーカーボン」について知っている人々はあまり多くないかもしれません。一方、海の現状や温暖化の被害に心を痛めたり、何とかしなくては、と思っている人は増えています。お互いに学びあい、刺激しあい、支えあって、それぞれができる活動を進めていきませんか。

みなさまのご参加をお待ちしております。

株式会社未来創造部代表
枝廣淳子