英国国立海洋センター(National Oceanography Center)は、2023年1月30日、珠江デルタ(中国珠江河口の広州、香港、深圳市、東莞市、マカオを結ぶ三角地帯を中心とする地域)における研究で、マングローブ林を活用した沿岸防御の大幅な改善につながり得る画期的な発見をしたことを発表しました。
豪雨や台風など極端な気象現象が起こった際、マングローブ(沿岸の塩水域に生育する低木)には水位を下げる効果があるという研究結果です。沿岸のマングローブ林がデルタ平野の水の動きをどう変えるかを示す初めての研究としています。
研究が行われた場所は、香港、深圳、広州といった中国の大都市が位置する南シナ海の都市デルタ地帯で、都市の成長と共に洪水に脆弱な地域が拡大しています。マングローブが自然の防御層となる一方、都市デルタ地域におけるマングローブの大規模な復元には、その防御層を効果的に設計するために場所に応じた数値シミュレーションが不可欠であることも示されています。
NOCの海洋システムモデリンググループの上級科学研究員で、本研究の主執筆者でもあるMichela De Dominicis博士は次のように述べています。「これは、自然を活用した効果的な沿岸防御の計画を立てるうえで役に立つ重要な新しい研究です。マングローブは、コミュニティを守るために我々が自由に使える極めて重要な自然資源です。マングローブだけで水の流れが完全に止まらないとしても、洪水の範囲を縮小したり、堤防など従来の洪水防御と組み合わせたりすることができるので、河川構造物の高さをより低くすることが可能になります」
沿岸植生が、極端な水位をどのように下げることができるのか、その制御因子についてこれまでの研究で明らかになっていないことから、この研究は特に価値があるとしています。また、炭素貯留、生物多様性、沿岸侵食の保護などマングローブによる恩恵を検討するとともに、マングローブの植林が有効的な投資になり得る高潮の減少量を検討する今後の調査にも役立つものであるとしています。
英国国立海洋センター
New study paves the way for improved nature-based coastal defences:
https://noc.ac.uk/news/new-study-paves-way-improved-nature-based-coastal-defences
本研究の詳報(英科学誌ネイチャー電子版):
https://www.nature.com/articles/s43247-022-00672-7