2017年4月から2022年3月にわたって、JICAの技術協力プロジェクトとして、「コーラル・トライアングル」におけるブルーカーボン生態系とその多面的サービスの包括的評価と保全戦略(Blue CARES)が実施されました。「コーラル・トライアングル」とは、インドネシア、フィリピン、マレーシア、東ティモール、パプアニューギニア、ソロモン諸島の6カ国をカバーする三角形の地域です。
このプロジェクトでは、東京工業大学の灘岡和夫教授をリーダーとする日本の研究者たちが、フィリピンとインドネシアの政府機関や大学などと共に、沿岸生態系とブルーカーボンの実態を調べ、沿岸生態系の保全を地球温暖化対策につなげるための「ブルーカーボン戦略」の政策提言を目指しました。地域と国の両方のレベルで保全戦略を策定するためにブルーカーボン生態系を共同で研究する取り組みの先駆けとなりました。
2023年4月4日のJICAのプレスリリースによると、マングローブ林と海草に関して補足調査が行われており、フィリピンではパラワン島などが主な調査地域となっています。Blue CARESは、機材の供与や、フィリピンの短期研修生と博士論文研究を行う留学生の日本への招聘を実施しました。
また、同プロジェクトでの協働によって、政府機関や地方自治体、学術機関、非政府団体などさまざまなステークホルダーが集まり、フィリピンのブルーカーボン・ネットワーク(BCNet)が設立されました。BCNetは、プロジェクト終了後も引き続き、現地調査や保護活動、ブルーカーボン戦略を実施していく予定です。
2023年は、フィリピンのアクラン州とタクロバンでブルーカーボン・ステークホルダー・サミット(Blue Carbon Stakeholders Summits)も開催され、研究結果とブルーカーボン戦略の活用についての議論が行われています。
2023年1月には、Blue CARESの支援によって、「アクラン州の河川・入り江・沿岸の包括管理協議会(Aklan Rivers, Bays, and Coasts Integrated Management Council)」の設置に関する同州のステークホルダーの覚書が締結されました。Blue CARESに参加した日本とフィリピンの専門家たちも、この協議会を持続可能な形で確実に実施するための同州の条例草案の策定に携わりました。
地元の協働パートナーであるアクラン州立大学のYasmin Tirol博士は、「地方自治体やコミュニティのステークホルダーとともに、研究結果を発信し、統合的な管理組織を動かし、それぞれの地元に合わせたブルーカーボン戦略に向けての行動計画を事業化していくことを楽しみにしています」と期待を述べています。
<参照情報>
海の森を守り、地域社会を豊かに フィリピン、インドネシアhttps://www.jica.go.jp/publication/mundi/1711/201711_05.html
Philippines, Indonesia and Japan lead efforts in blue carbon conservation to address climate change
https://www.jica.go.jp/philippine/english/office/topics/news/230404.html