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日本・世界の取り組み
2023.06.05
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世界初!洋上風力発電しながら、海藻を養殖し、炭素回収・貯留へ

北海のオランダ海域に広がる洋上風力発電所に、世界初となる商業規模の海藻養殖場が設置されることが2023年2月16日、オランダのNPO団体North Sea Farmers(NSF)により発表されました。

“NORTH SEA FARM 1”と呼ばれるこのプロジェクトは、NSFが主導し英プリマス海洋研究所や海藻業界のパートナーらによって運営されるもので、海藻養殖方法の試験・改善を行う一方で、海藻による炭素回収および貯留の可能性について研究が行われることになっています。米IT大手Amazonは、養殖場の設置に150万ユーロ(約2.2億円)の資金を提供し、炭素吸収の可能性に関する研究を一年間支援することを発表しています。

養殖場は、洋上の風車と風車の間の空きスペースに設置されます。これにより、他に利用頻度の高い北海海域でも海藻養殖を拡大していくことが可能になります。仮に、2040年までに約100万haになると予想される洋上風力発電設備のスペース全体に海藻養殖が拡大した場合、年間数百万トンのCO2削減が可能になるとしています。

NSFは、今年の秋に養殖場の設置と海藻種苗の生産を行い、2024年春に最初の収穫を行いたいとしています。

海藻が二酸化炭素を大量に吸収することは知られていますが、産業規模での炭素除去がどの程度実行可能かについてはまだ明らかにされていません。

マングローブや海草、塩性湿地などのブルーカーボン生態系では、植物の生長と死滅の過程で分解物質が地中に吸収されるため、炭素は身近な環境の泥や堆積物中に隔離されます。

これに対し海藻は、岩場や露出した場所で生育するため、海藻のデトライタス(生物の死骸や排泄物などが分解されて微粒子状になった有機物)は絶えず海中に放出され、海底や深海の未知なる場所で隔離されるため、炭素隔離のプロセスを追跡することがはるかに困難とされています。

本プロジェクトの研究者らは、海藻養殖による大気中の炭素除去の可能性を探り、大規模な海藻養殖がもたらす影響をモデル化する計画です。

本研究によって、自然界における海藻の炭素循環プロセスの理解がさらに進み、デトライタスを追跡して炭素が海底や深海で長期的に貯留され得る場所を特定できるようになることが期待されています。そして、最終的にNORTH SEA FARM1は、こうした養殖場が海底の保全対策と一体化して将来的に大規模な炭素回収をおこなうための青写真になり得るとしています。


<参照情報>
AMAZON FUNDS THE WORLD’S FIRST COMMERCIAL-SCALE SEAWEED FARM LOCATED BETWEEN OFFSHORE WIND TURBINES
https://www.northseafarmers.org/news/20220216-amazon

NORTH SEA FARM 1
https://www.northseafarmers.org/about-nsf1

PML leads the science on the world’s first co-located seaweed and offshore wind farm
https://www.pml.ac.uk/news/PML-leads-the-science-on-the-world%E2%80%99s-first-co-loca

ブルーカーボンに関する取り組み事例