地球上で最大級の沿岸植生生息地であるケルプの森や海藻藻場は、これまでそのほとんどが「ブルーカーボン生態系」として組み込まれてきませんでした。しかし、これらの海藻林が気候変動の緩和に重要な役割を果たす可能性があることが、コンサベーション・インターナショナル(CI)と西オーストラリア大学による画期的な国際研究により明らかになりました。
2023年7月12日付の科学誌「バイオロジカル・レビューズ(Biological Reviews)」に掲載された同研究の論文によると、ケルプの森と海藻藻場の保護・再生・管理改善により、世界全体でおよそ3,600万トンのCO2削減効果が得られると推定されており、これは樹木11~16億本が回収できるCO2量に匹敵するとされています。
また、ケルプの森と海藻藻場における炭素隔離を正確にカテゴリー化・定量化するための枠組みも提示されており、同研究の重要な点であるとしています。
主執筆者である西オーストラリア大学とインターナショナル・ブルーカーボン・インスティテュートのアルベルト・ペッサロドーナ博士は、「研究の結果から、我々はこれらの海藻林が気候にもたらす恩恵を著しく過小評価してきた可能性があります」と述べました。
その主な要因として、いくつかの知識格差が存在していることが挙げられていますが、この格差については現在マッピングや、海藻林によって異なる長期的な炭素貯留能力を評価する今回の研究発表を通して取り組みが進められているとしています。
今回の研究(カテゴリー化)で明らかになった点は以下のとおりです:
- 海藻林を対象とした保全・再生・植林は、世界全体で年間数千万トンのCO2削減につながる可能性があり、実行可能な気候変動緩和策を提供するものである。
- 海藻林における炭素隔離への貢献は場所による違いが大きい。温帯や極地にある海藻林の方が熱帯海域にあるものよりも多くの炭素を吸収する。これは、冷涼で栄養豊富な海水が海藻林を最大規模に成長させ、それが炭素吸収源として優れているためである。
- これにより、まだブルーカーボンによる解決策に関与していない極圏や温暖地域の国々にも近くその機会が訪れる可能性がある。炭素隔離のポテンシャルが高い地域として、オーストラリア大陸海岸沿いのグレートサザンリーフ、カナダ北極圏東部の海藻林、ノルウェー、チリ、日本など。
ペッサロドーナ博士はまた、「この研究によって、炭素貯留をはじめ、生物多様性の増加、魚類の生息域の維持に至る海藻林の重要性に世界中の注目が集まることを期待しています。気候変動の緩和に特効薬はありません。可能な限り多くの解決策を必要とする総力による取り組みなのです。我々の研究は、海藻林の保護と再生がブルーカーボンによる解決策として含まれるものであることを証明しています」と述べました。
<参照情報>
NEW RESEARCH FINDS KELP AND SEAWEED FORESTS ARE OVERLOOKED CLIMATE CHANGE SOLUTIONS
https://www.conservation.org/press-releases/2023/07/12/new-research-finds-kelp-and-seaweed-forests-are-overlooked-climate-change-solutions
New study reveals seaweed’s hidden climate benefits
https://www.conservation.org/blog/new-study-reveals-seaweed-s-hidden-climate-benefits
Carbon sequestration and climate change mitigation using macroalgae: a state of knowledge review |科学誌「Biological Reviews」
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/brv.12990