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2024.07.25
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富士通、AIを活用してカーボンニュートラルに貢献

Photo by MIKI Yoshihito is licensed under CC BY 2.0

富士通は2024年3月26日、海中の生物や構造物の3次元形状データを高解像度で取得する、AIを活用した技術を開発したことを発表しました。企業や自治体などによる海洋生態系保全施策の立案支援に活用し、カーボンニュートラルや生物多様性保全に貢献することを目指します。

本技術は、海洋デジタルツインの研究開発の一環として開発されたものになります。海洋デジタルツインとは、海洋の状態をデジタル空間に高精度に再現し、海洋を構成する環境の変化や海洋を活用した施策の効果などを、シミュレーションによって予測可能にするものです。

海洋生態系保全や二酸化炭素吸収量把握のためには、数センチメートルの解像度で3次元形状データを取得し、個体識別と体積推定を行う必要がありますが、これまでの技術では10センチメートル程度の粗いデータしか得られませんでした。今回2つの技術を開発することで、高解像度のデータ取得を可能にしています。

ひとつは、海中の被写体の色や輪郭を復元する画像鮮明化AI技術です。濁った海中での撮影では、色が劣化したり輪郭がぼやけたりします。濁りを除去するAI、輪郭を復元するAIという2つのAIを使って被写体本来の色を復元し、ぼやけた輪郭を改善した画像を生成して3次元化します。これにより、物体ごとの形状計測が可能になりました。

もうひとつは、移動中の自律型無人潜水機からリアルタイムで計測できる海中3次元計測技術です。短周期のレーザー発光と高速走査による高速サンプリング技術を採用するとともに、3つのレーザー波長の中から海況に適した波長を選択できる技術を導入しました。これにより、移動している潜水機からの3次元計測ができるだけでなく、物体の動きに追従しての計測も可能になることが期待されます。

本技術の効果を確認するため、2024年1月22日から25日にかけて、沖縄県石垣島近海において実証実験が行われました。サンゴ礁や海中に設置された配管などを計測し、数センチメートルの高解像度3次元形状データをリアルタイムで取得することに成功しています。

今後は、強い潮流や起伏に富んだ海底地形など様々な環境下でも安定してデータを得られるよう、また、海藻から洋上風力発電設備の点検に至るまで測定対象を拡大できるよう、技術開発が進められる予定です。並行して生物学や環境学などの知見を取り入れたシミュレーション技術の開発を進めることで、海洋デジタルツインを実用化し、カーボンニュートラルに向けた施策に取り組む企業、自治体、団体の施策立案支援を目指すとしています。


<参照情報>
(1) プレスリリース
海洋デジタルツイン実現に向け、AIを活用して海中の生物や構造物の3次元形状データを取得する技術を開発
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/03/26.html

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