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2025.03.10
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米国NPOが新たな報告書を発表:海洋生態系への投資が不足、拡大の余地大

An Ocean of Potential

環境保護活動に取り組む米国NPO団体の、エコシステム・マーケットプレイス(Ecosystem Marketplace)およびカトゥーンバ・グループ(Katoomba Group)は2024年11月11日、新たな報告書『”An Ocean of Potential”(仮訳:海が拓く可能性)』を発表しました。

報告書では、沿岸および海洋生息域への投資には、生態系の劣化を防ぎつつ気候変動緩和の可能性を最大限に引き出すという、非常に大きなポテンシャルが秘められていることが示されています。

ブルーカーボン生態系は世界的に著しく劣化しています。それらを保護し回復するには、既存プロジェクトの規模拡大と新たな地域への活動の展開という両方が求められることから、そこに多額の投資が必要になるとしています。

同団体らの母体フォレスト・トレンド(Forest Trends)で生態系の効果的な保全活動を主導し同報告書を執筆したトゥンディ・アガーディ氏は、ブルーカーボン生態系の保護・回復を促進し広げていくための様々な資金の流れがすでに利用可能であると述べています。

さらに、現在、各国および民間セクターの間で、ブルーカーボンをNDC(国が決定する貢献)に取り入れようとする世界的な動きがあり、彼らが同じ考えを持つことが資金提供を促すために必要なことかもしれないとも語っています。

同報告書における主要な研究結果は下記のとおりです:

  • ブルーカーボンは、自主的炭素市場全体の中で、依然として小規模な「特化型市場」である。年間クレジット取引全体の1%も占めていない。需要は主に、クレジットを購入する企業や投資家と、国の気候政策としてブルーカーボンに関心を持つ政府である。供給の拡大が難しい状況にあるのは、高額な初期費用や検証機関の不足などである。
  • しかし、ブルーカーボン・クレジットは現在の炭素市場相場を大きく上回るプレミアム価格で取引されている。これは、非常に高額な初期プロジェクト費用に加えて、ブルーカーボン・プロジェクトによる環境的にも社会的にも多面的な利益に魅力を感じる買い手にとって、ニッチな市場としての価値があることを反映している。
  • 海洋の保護・回復のための多種多様な収益手段や技術支援はすでに存在する。「ブルーボンド」もそのひとつ。炭素市場でも、民間セクターの資金を追加的に導入することでブルーカーボンの可能性を実現する一助となり得る。ただし、カーボンファイナンスは、社会的・環境的・経済的持続可能性を考慮して、慎重に計画し実行する必要がある。
  • ブルーカーボン・ファイナンスの規模拡大の機会として、REDD+(途上国の森林減少に対する対策)の枠組みをブルーカーボンにも活用し小規模な試験的プロジェクトを国家や自治体によるアプローチへと変換させたり、開発銀行や多国間機関を通じた公民による投資を促進させたりすることなどがある。

フォレスト・トレンド社長兼CEOのマイケル・ジェンキンズ氏は、「私たちはネイチャー・ポジティブ経済への移行において重要な岐路に立っています」と述べ、「この取り組みには、沿岸および海洋の生息地を保護し回復させることが不可欠です。本報告書で行った研究は、ブルーカーボン固有の可能性について認識を高め、ネイチャー・ポジティブな行動を促すうえで極めて重要です」と続けました。

<参照情報>
New report: “An Ocean of Potential” exists for Blue Carbon finance, an essential yet largely untapped climate mitigation strategy
https://www.ecosystemmarketplace.com/articles/an-ocean-of-potential/

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