「種子島の海と山をつなぐ会(2021年3月設立)」による藻場再生プロジェクトは、鹿児島県立種子島中央高校の授業(総合的な探求の時間)の一環としてスタートした活動です。現在では、鹿児島県立種子島高校、鹿児島県立錦江湾高校の生徒にも活動の輪が広がっています。
中心メンバーである高校生全員が共同代表を務めるこのプロジェクトでは、具体的な藻場再生の取り組みをいよいよこれからスタートするとのこと。これまで、調査やクラウドファンディングなどの準備を行ってきました。
実はこの活動では、はじめから藻場の再生を目指していたわけではありません。種子島は全国第二位のウミガメの個体数を誇ることから、当初はウミガメの保護に関する活動を考えていました。そのような中、2020年に種子島で開催されたブルーエコノミーのシンポジウム「ブルーエコノミーと漁撈文化」に参加し、藻場の重要性を知りました。
藻場はウミガメやその他の海の生物の大切な餌場であると同時に、漁師さんにとっては漁場でもあります。藻場の減少によって、ウミガメと漁業者の間で競合が生じていることも知り、藻場の再生にも力を入れることになりました。 こうして設立された「種子島の海と山をつなぐ会」では、「ウミガメの生息域の保全を面的に広げて考えること」が大切な理念となっています。
これまで、地元の農家さんや漁師さんに以前あった藻場について聞き取りを行ったほか、専門家による水質分析などを行ってきました。その結果、湊川に照準を当てて、減少している藻場の再生を目指すことになりました。
「種子島の海と山をつなぐ会」の取り組みの大きな特徴は、河川の再生と森の再生とをセットで考えているところです。現在、針葉樹に覆われている森に、広葉樹を中心とする多様な種類の木を植えることで、豊富なミネラル類を含む土壌を醸成できる森へと再生させます。同時に、森からの土壌を運ぶ河川の浄化を行い、河口域の藻場再生を実現し、多くの底生生物が生息可能な環境を整備していきます。このプロジェクトでは、新たに海草の種を植えるのではなく、植樹と河川浄化を行うことで、藻場が育つ環境を整え、もともとあった藻場を再生させることを目指しています。
このプロジェクトを実行するために2021年11月に行ったクラウドファンディングでは、220万円の目標額に対して、約330万円もの金額が集まりました。今後は、クラウドファンディングで得た資金を用いて、水質浄化と藻の付着を目的とした特殊セラミックを網カゴにつめ、河口域や農業排水路と河川の合流点に沈めるほか、専門家による水質調査や網カゴ周辺の生物調査などを行う予定とのこと。高校生による藻場再生のプロジェクト、若い力を応援しています!
参考資料:種子島の海を豊かに!藻場を再生し、ウミガメと漁業者との共生の実現へ(クラウドファンディングは終了しています)