2020年12月、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による、生物多様性と気候変動についての合同ワークショップが開催されました。
このワークショップでは、気候変動と生物多様性の対策をそれぞれ別個に論じることはもはやできないという問題認識を背景に、生物多様性と気候変動の緩和・適応の間の相乗効果とトレードオフについて議論されました。
その結果をまとめた『生物多様性と気候変動 IPBES-IPCC合同ワークショップ報告書』では、6つの大項目と41の小項目でワークショップの内容を整理しています。海域が生物多様性にとっても気候変動対策にとっても非常に重要であることが随所で述べられており、小項目の一つでは「ブルーカーボン」についても紹介されています。その主な内容は以下のとおりです。
- 陸域・海域の生態系の損失と劣化を回避し反転させることは、生物多様性保護と気候変動緩和の両立、および気候変動適応のコベネフィットを生むために重要である
- 重要な生態系には、陸上生態系の他に、マングローブ、塩性湿地、コンブの森、藻場、比較的深い海域や極域の浅海域などの沿岸生態系(水域の炭素吸収源:ブルーカーボン)などがある
- 生態系の中には、マングローブのように面積当たりの炭素吸収量が森林よりも大きいものもある
- 生態系の破壊と劣化は、海洋生態系の生物多様性の損失の2番目に大きな要因である(陸域・淡水域生態系では最も大きな要因)
- 自然生態系の破壊と劣化を反転させることで、生物多様性との間にコベネフィットを実現できる。また、沿岸の湿地帯やサンゴ礁は高波や海面上昇から沿岸を守る役割を果たし、湿地は洪水の低減に役立つなど人間の適応上のコベネフィットももたらす
なお、このワークショップの結果は、IPCC第6次評価報告書と総合報告書にも反映されることになっています。
IGES 『生物多様性と気候変動 IPBES-IPCC 合同ワークショップ報告書 IGES による翻訳と解説』
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/policyreport/jp/11634/IPBES_IPCC_ws_J_final.pdf