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日本・世界の取り組み
2022.02.18
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東京ガスグループ:アマモ場再生活動

日本でも、企業によるブルーカーボンの取組みが広がってきています。東京ガスは、国土交通省が主宰する「東京湾UMIプロジェクト」に参画し、アマモ場再生に取り組んでいます。「UMI」は「海(Umi)をみんな(Min-na)で愛(I)する」の頭文字を取ったもので、横浜港金沢地区白帆にある人工浅場等を活用して、企業、NPO、市民等の協働でアマモ場育成活動を促進するプロジェクトです。東京ガス・サステナビリティ推進部の新井さんにお話を伺いました。

取り組みのきっかけ ~森里海つなぐプロジェクト

東京ガスグループでは、私たちの暮らしを豊かにしてくれている「森」「里」「海」とのつながりに心からの“ありがとう”を言える社会を目指して、環境・社会貢献活動「森里海つなぐプロジェクト」を実施しています。お客さま、自治体、NPOなどとのつながりの輪を大きく育てていくことで、地球温暖化防止や生物多様性の保全、地域の活性化など、様々な効果を生む取り組みになることを目指すものです。

2017年から「東京湾UMIプロジェクト」に参画し、アマモ場再生への取り組みを始めました。「海」の活動としてアマモ場の再生に取り組んでいる理由の一つは、「森里海つなぐプロジェクト」が大切にしたい4つの価値観に重なっていたからです。
・長期的な視野を大切に、成果がすぐに見えにくい曖昧なことにも粘り強く取り組みます
・ワクワクと遊び心を大切に、面白がることに一生懸命になります
・ひと手間を大切に、アナログで身体感覚を発揮する方法を選択します
・地域の価値や資源を大切に、地域の様々な循環を生み出します

つながりが支えるアマモ場再生活動

アマモ場再生の取り組みは地道な作業の積み重ねです。毎年同じサイクルを繰り返し、少しずつアマモを増やしていきます。具体的には、6月に海に入ってアマモの種がついた枝「花枝(はなえだ)」を採取します。採取した花枝は場所を選定して育て、種子が放出されるまで数か月熟成し、11月に種を海中に蒔きます。この作業を毎年繰り返し行うことで、アマモ場の再生につなげようとしています。金沢八景-東京湾アマモ場再生会議NPO法人海辺つくり研究会などの協力を得ることで、このサイクルをきっちりと回すことができています。

アマモの種まき(11月)

海底のアマモ観察には、水中ドローンを使います浅瀬に植えたものは、直接確認することができます。また、国土交通省とも連携し、生息状況などをモニタリングしてもらっています。

取り組みを進める上で欠かせないのが、グループ従業員とその家族の参加です。これまで延べ約770名が活動に参加してきました。参加者にとっては、活動そのものを楽しむ場でもあり、“海と暮らしのつながり”を考える環境教育の場にもなっています。

2019年10月には、第3回東京湾海の環境再生賞で、みなと総合研究財団理事長賞を受賞。活動を続けてきたことへの自信につながっています。

課題を乗り越えて

これまで約35万粒の種を蒔きましたが、すべてが順調に育っているわけではありません。台風や海水温上昇などの影響を受けると、アマモ場が突然なくなってしまうこともあります。そんなときは、海辺つくり研究会が主体となって、木更津など別のエリアで種を採取して横浜に移植するなど、東京湾内で地域間連携をしながら育ててもらっています。

また、影響を受けにくいアマモを育てるために、国土交通省と海辺つくり研究会が連携して、海水温上昇に強い種などの調査・研究も進めています。

コロナ禍による影響も小さくありません。人を集めての活動が限られているため、参加者の募集ができていないのです。しかし一方で、コロナ禍はチャンスを与えてくれているようにも思います。人の価値観が大きく変わり、リアルな体験の大事さにあらためて気づいたという声や、人々の社会貢献への意識が高まっていることも感じています。こうした良い面を生かしていけるよう、アフターコロナも見据えながら活動を続けていきます。

(アマモの生長のようす 2021年夏)

アマモ場の再生活動をお客さまとともに

2021年、「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合」が発行するブルーカーボンを対象とする「Jブルークレジット」としてアマモ場再生活動が認証されました。まずは自社でクレジットを購入し、横浜ショールームにおけるガス消費に伴うCO₂排出を一部オフセットしました。

「Jブルークレジット」をきっかけに、アマモ場再生活動と本業のエネルギー事業がつながり、サステナビリティ推進部に当社法人営業部門からの問い合わせが増えてきました。法人のお客さまである企業とともに環境価値を共創する取り組みが益々増えていくことを実感しています。

「今後は、お客さまのみならず、より様々なステークホルダーと共に活動するためのお声掛けを続け、さらに炭素吸収量の計測など、取り組み効果の見える化も検討したいと思っています」と、新井さんは話してくれました。

暮らしや社会を支えるエネルギー事業を本業としている東京ガスでは、気候変動対策としてだけではなく、海の生態系保全や持続可能な食の確保といった自然資本を大切にするという観点からも、ブルーカーボンの可能性に注目しています。取り組みをどのように発展させていくのか、今後が楽しみです。