2021年5月、海洋の美しさと健全性の回復に取り組む英国の海洋保護協会と、同国で再野生化に焦点を絞って活動するリワイルディング・ブリテンは、気候危機と戦うための海洋を基盤とした解決策であるブルーカーボンについての共同報告書を発表しました。その中で、2050年までに英国のネットゼロ目標を達成するためには、同国の海洋環境に含まれる炭素を保護し、回復させるための一貫した戦略が不可欠であることを明示しています。
炭素排出量の削減に役立つ重要な方法の一つは、より多くの二酸化炭素を大気中から取り込み、長期的な自然解決策となるものに貯留することです。海洋の中の生態系の保護・再野生化もこうした解決策の一環です。
2021年5月に英国の海洋保護協会などから出されたブルーカーボンについての共同報告書によると、自然を活用した気候変動対策は、緩和策全体の3分の1を担うことができますが、報告書作成時点では、世界全体の気候変動への投資のうち3%も充てられていないといいます。
世界各国のほとんどの政府は、気候変動と戦う力となるブルーカーボンによる解決策の役割を理解しておらず、海洋保護に対する資金調達の正式な仕組みもないのが現状です。
世界的にカギとなるブルーカーボン生態系の再野生化、すなわち、海草藻場や塩性湿地、マングローブなどの海洋沿岸生態系の保全だけでも、18億3000万トンもの二酸化炭素を削減できる可能性があります。これは世界全体で削減すべき排出量の5%にあたります。さらに、この数字には、海の野生生物や海洋生態系、海底堆積物の中に貯留されている膨大な炭素量は含まれていません。海洋生態系保護の強化は、生物多様性にとってもブルーカーボンにとっても、極めて重要なことなのです。
海洋保護協会は英国政府に、海洋沿岸生態系に含まれている炭素についても、森林地帯や泥炭湿原と同様に重要視することを求めています。具体的には、英国政府と地方分権政府に対し、
・生物多様性とブルーカーボンのために海洋の再野生化の規模を拡大する
・ブルーカーボンの保護と回復を気候緩和策と環境管理政策に組み入れる
・民間セクターと協働し、持続可能で革新的な低炭素型の商業漁業と養殖を開発・支援する
という三つの領域において、自然を基盤とした重要な行動を取るように呼び掛けています。
Blue carbon Ocean-based solutions to fight the climate crisis
https://s3.eu-west-2.amazonaws.com/assets.rewildingbritain.org.uk/images/Blue-Carbon-report-summary.pdf?mtime=20210504092151&focal=none