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日本・世界の取り組み
2023.02.13
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岩手県洋野町:増殖溝を活用した藻場の創出・保全の取り組み

岩手県洋野町は2022年11月30日、増殖溝を活用した藻場の創出・保全活動により、Jブルークレジットの認証を受けたことを発表しました。発行クレジット量3,106.5[t-CO2]は、Jブルークレジット制度が施行されて以来、最大量となります。

洋野町は、岩手県の東北端に位置し、南北の海岸線約29キロメートルに沿って、断続的に平坦な岩盤が平均150メートル沖まで張り出しています。その岩盤に溝を掘り、波のエネルギーを利用して新鮮な海水を引き込むことにより、エサとなる昆布を繁茂させ、ウニを育てているのが「増殖溝」です。

増殖溝

増殖溝の総延長距離は17.5キロメートル、幅は約4メートル、深さは約1メートル。干潮時でも波力により新鮮な海水が流れ込む構造になっているため、増殖溝のみならず、その周辺でもワカメや昆布などの大型の海藻が生育しやすい環境が作り出されています。また、増殖溝の底にコンクリートブロックを敷設することで、ブロックや増殖溝の側壁にも豊富な昆布が自生しています。

2011年3月に発生した東日本大震災では、増殖溝が瓦礫と泥に埋まってしまいましたが、迅速に除去したことで被害は最小限にとどまり、早期に藻場を回復することができました。しかし、特に2016年以降、気候変動等による海水温上昇の影響で沖合での磯焼けが継続し、藻場の創出・保全活動の重要性が増しています。

そこで、増殖溝の効果を更に高めるために、通常のサイクルに加え、増殖溝及びその周辺で様々な藻場保全活動が行われています。新鮮な海水の流入を維持するために増殖溝底の土砂等を掘りあげたり、ツブ貝やヒトデ等の植食生物の駆除を行ったりすることで、CO2吸収量の維持・回復につながりました。

活動は、海中だけに留まりません。良質の海藻を育てるためには、豊かな山から栄養分を含んだ水が安定的に供給されることが不可欠です。2007年から毎年、地元の小学生や漁業関係者などが参加して、川の上流域にコナラやクリの苗木を植樹しています。これは、植樹体験を通して、藻場を回復、保全するために山の養分が重要であることを伝え、持続可能な藻場の保全活動につなげていく試みでもあります。

植食生物の駆除
苗木の植樹

本取り組みを持続可能なものとすべく、個々の漁業者の自主的な活動に頼らず、洋野町全体として活動計画を立案、実行するため、「洋野町ブルーカーボン増殖協議会」が創設されました。第一歩としてクレジット発行要件の検証を行い、Jブルークレジットの認証を受けるに至っています。

協議会では、クレジット販売により得られた資金を活用して、岩盤やコンクリートブロックの清掃による新基質の創出、人為的な栄養塩供給や新形状ブロック等の新技術導入、情報収集や教育活動等、藻場の創出・保全活動の一層の発展を目指すとしています。


<参照情報>
JブルークレジットRの認証について
https://www.town.hirono.iwate.jp/doc/2022112900014/

令和4年度(2022年度)Jブルークレジット認証・発行について
https://www.blueeconomy.jp/archives/2022-jbc-register/

※写真は、Jブルークレジット認証申請書類より

ブルーカーボンに関する取り組み事例