静岡県の榛南(はいなん)海域では、かつて広がっていた藻場が消滅してしまったそうです。それから、25年以上にわたり、漁業者や自治体による藻場再生プロジェクトが行われてきました。この取り組みは確実に実を結び、2022年度、Jブルークレジットを取得しました。
榛南海域で磯焼けが目立つようになったのは、1990年頃のことでした。かつては約8,000haあったといわれる豊かなカジメとサガラメの藻場は2000年までには、ほぼ消滅してしまいました。それに伴い、貝類やアオリイカ等も減少し、アワビ漁も20年ほど前から途絶えています。
こうした状況を受け、1996年に南駿河湾漁業協同組合と近隣の関連自治体(市町)による「榛南地域磯焼け対策推進協議会」が組織されました。1999年には静岡県がコンクリートブロックにカジメを自然着生させ、ブロックごと榛南海域に移植する実験を実施するなど、県も藻場再生に向けた取り組みを行っています。さらに2009年に、漁業者と南駿河湾漁業協同組合による「榛南磯焼け対策活動協議会」が組織され、2つの協議会と静岡県が連携しながら、母藻の設置や種苗投入、藻場回復状況のモニタリング、藻食魚であるアイゴ・ニザダイなどの除去活動を行っています。
こうした取り組みの結果、現在では約870haのカジメ藻場が回復しました。従来の8,000haの10分の1以上が回復している計算です。減少していた貝類やアオリイカ等の回復もみられるようになりました。藻場の回復は、地球温暖化の抑制だけではなく、生物多様性の向上にも貢献しているのです。今回取得したJブルークレジットは、2021年4月1日から2022年3月31日までの藻場再生プロジェクトによる49.1[t-CO2]が対象になっています。
今後は、取得したクレジットを活用して、さらなるカジメ藻場の回復と、サガラメの復活に向けた活動を行うとのこと。そして20年ほど前に途絶えたアワビ漁などの再開による水産振興も目指すそうです。
令和4年度(2022年度)Jブルークレジット認証・発行について「榛南地域における藻場再生プロジェクト」
https://www.blueeconomy.jp/archives/2022-jbc-register/#03
静岡県「藻場回復への取組」
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyoshigoto/suisan/suisanshigen/1047554/1028114.html