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2023.03.12
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尾道:海のゆりかご(干潟・藻場)再生による里海づくり

瀬戸内海のほぼ中央に位置する広島県尾道市と浦島漁業協同組合は、2023年2月10日、「尾道の海のゆりかご(干潟・藻場)再生による里海づくり」として130.7[t-CO2]のJブルークレジットの認証を受けました。

クレジットの認証を受けた海域は、1984年から2020年にかけて、中国地方整備局が航路整備により発生した浚渫(しゅんせつ)土を利用して、4か所の人工干潟(百島、灘、海老、高尾)、計約75haを造成した場所です。従来から浦島漁業協同組合が、干潟・藻場の保全、再生活動を行ってきました。

瀬戸内海はこれまで、地元ではきれいで透明度の高い海との認識はありましたが、豊さという点では課題があったといいます。近年とくに、気候変動に伴う海水温の上昇により魚種が変わってきていることや、主流となるアサリや刺し網魚の漁獲量が減少している、などです。

そこで、浦島漁業協同組合は尾道市と連携し、2013年から、流出した砂のリサイクル(整地作業)や、干潟の生産性向上のための取り組みを進め、藻場の繁茂状況の確認等を行ってきました。

これらの活動を通じて、干潟では生物の種類・個体数が増加し、アサリの生産性が回復したほか、多様な生物の生息やアマモ場の広がりも確認されるようになりました。活動場所は地元の浦崎小学校、浦崎中学校による環境学習の場としても提供されています。

また、このプロジェクトによる食料供給と水質浄化にかかわる経済価値を推計したところ、干潟によるアサリの生産量が年間10トン増加、藻場によるメバルの生産量が年間7トン増加など、年間1億4千万円程度の経済価値があると評価されました。

今後は、このJブルークレジットで得た売却益をもとに、アマモ場の拡大をめざした移植活動や水質浄化、水産生物の保全・育成、調査や環境学習を継続的に行っていきます。また、高齢化に伴う活動の人員不足を補うために、市民参加型の活動を企画し、将来の担い手も育成したいと考えています。

尾道市は人口約13万のうち約5万人が島嶼部に暮らすという特徴があり、しまなみ海道ややまなみ街道のゲートウェイといった交通の要所でもあります。美しい海から豊かな海へ。ブルーカーボンの取り組みで実現する強み(資源)を活かしながら、マリンスポーツや観光産業とも連携を図り、交流人口・関係人口の増加と地域活性化につなげていきます。


<参考情報>
令和4年度(2022年度)Jブルークレジット認証・発行について
https://www.blueeconomy.jp/archives/2022-jbc-register/

尾道市:ブルーカーボン・オフセット推進事業「尾道の海のゆりかご(干潟・藻場)再生による里海づくり」について
https://www.city.onomichi.hiroshima.jp/soshiki/15/56029.html

※写真は、Jブルークレジット認証申請書類より

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