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日本・世界の取り組み
2023.03.26
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英国:野禽湿地トラスト(WWT)、新たな湿地の創造への取り組み

英国の湿地の保全活動に取り組むNGO野禽湿地トラスト(Wildfowl & Wetlands Trust:WWT)は、気候危機、自然の危機、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に満たされた状態)の危機に対する取り組みと英国のコロナ禍からの回復の一助として、10万ヘクタールの湿地の創造を提案しています。

新しい湿地から得られる多くの恩恵の中でも、以下の恩恵を活用するネットワークの構築を進めようというものです。

  • 炭素の隔離・貯留を目的とする「炭素貯留のネットワーク」
  • 洪水の削減を目的とする「洪水管理のネットワーク」
  • ウェルビーイングの向上を目的とする「都市でのウェルビーイングのネットワーク」
  • 生物多様性を支えるための「水処理のネットワーク」

この中から、2022年11月3日に発表された「炭素貯留のネットワーク」のルート・マップについて紹介します。

WWTは、ブルーカーボンとコベネフィット(相乗便益)の機会を最大化するために、2050年までに英国で最小でも2万2000ヘクタールの自然豊かな塩性湿地の創造・復元および、既存の塩性湿地の資源の保護を提案しています。

塩性湿地の創造のケース・スタディとしては、ステアート湿地があります。この湿地は、英国環境庁とWWTの連携により、サマセット州で造られた477ヘクタールの広大な湿地です。セバーン河口の塩性湿地の喪失を補うための生息環境創造計画として、2014年に造られました。

湿地の堆積物を研究しているマンチェスター・メトロポリタン大学の研究チームの計算によると、ステアート湿地では、年間1ヘクタールにつきおよそCO2換算70トン(この数字はさまざまな要因から小さくなる可能性がある)に匹敵するペースで炭素を吸収していることが分かっています。また、この湿地では4年間に1万8000トンを超える有機炭素が貯留されました。これは、100万本以上の新しい木が10年生長することで貯留される炭素の量に匹敵します。

こうした塩性湿地の創造のプロセスには、以下の3つの要素が含まれます。

  • 提供:ブルーカーボンの貯留をはじめとする恩恵を提供するための塩性湿地を創造・管理する直接的な保護活動
  • キャパシティ・ビルディング:土地所有者や地方自治体へのアドバイスやトレーニングの提供、革新的な資金調達方法の創出、塩性湿地からの多様な恩恵を引き出す方法に関するさらなるエビデンスの収集と共有
  • コミュニティの参加:塩性湿地創造プロジェクトの設計・運営から、未来に向けた湿地の完成・管理まで、地元のコミュニティの形成に関して、人々の意見を聞き、参加してもらうこと

WWTはすでに、先頭に立って、既存および新しい塩性湿地の保護・管理を行う一方で、エビデンスの基盤を構築し、政府に対して支援と政策の変更をさらに働きかけ、民間部門とともに大規模に提供する新しい資金調達の構造を導き出しています。

もっと多くのことができる膨大な可能性があることが分かっており、それらを解き放つために、政府や地方自治体、企業、地域社会の確固たる努力の必要性を訴え、ブルー・リカバリー(健全な海洋経済の持続可能な回復)をともに実現していくことを呼びかけています。


<参考情報>
A Blue Recovery
https://www.wwt.org.uk/uploads/documents/2020-12-10/wwt-blue-recovery-proposal.pdf

Wetlands for Carbon Storage
https://www.wwt.org.uk/uploads/documents/2023-01-30/wwt-blue-carbon-route-map-2023.pdf

ブルーカーボンに関する取り組み事例