衛星データとAIで環境リスク分析を行うインドのブルー・スカイ・アナリティクス社は2023年2月27日、自社のホームページでブルーカーボン・クレジットの拡大に有効な「衛星を基盤とした測定・報告・検証(MRV)」について紹介しました。
効率的なMRVインフラは、ブルーカーボン市場が真のポテンシャルを発揮する上で重要なものです。炭素隔離の実際のポテンシャルを実証し、よりリスク耐性のある資金調達を惹きつけることで、投資家と購入者の信頼を高めることができるからです。
しかし、ブルーカーボンのプロジェクトは、MRVに関連する課題に直面しています。例えば、炭素ストック(森林、海洋等の炭素貯蔵庫内に貯蔵される炭素の量)の測定の難しさや、ブルーカーボン生態系の炭素貯留に影響するプロセスへの理解が限定的であること、MRVの取り組みに一貫した基準がないことなどです。
こうした課題の中心にあるのがデータ関連の問題です。基礎データが不足していて、変化を常時モニタリングするのが困難であること、データの質と一貫性に問題があること、数十年にわたる炭素ストックと炭素フラックス(森林、海洋等の各炭素貯蔵庫間の炭素の移動量)の変化を正確に追跡し続けられる長期的なモニタリングが必要であること、などです。
リモートセンシング技術は、このような問題を抱える従来のMRVの方法の欠点を補うことによって、カーボン市場における測定・報告・検証のプロセスに革命的な変化をもたらしつつあります。
特に衛星技術によって、高い精度で時空間スケール全体の炭素修復を追跡できるため、いくつかのMRV関連の問題を最小限に抑えられます。衛星リモートセンシングを使うことで得られる貴重なデータによって、炭素ストックの評価やブルーカーボン生態系の健全性と生産性の評価にとって重要な植被やバイオマスといった生態系指標の変化を推定しやすくなる、などです。
また衛星技術によって、立ち入ることができなかった遠隔地を含む、極めて広いエリアを調査することもできます。
さらに衛星技術は、次に示すように、さまざまなブルーカーボン市場のステークホルダーにとっても有益です。
購入者は、モニタリングと検証を通して、プロジェクトが意図したインパクトを達成していることを立証できる、独立した客観的な情報を得ることができます。
プロジェクト開発者は、プロジェクトの実行前にブルーカーボン生態系の状態をモニタリング・評価した基礎データによって、こうした生態系の変化を経時的に追跡・評価することができます。それによってプロジェクトが環境に与える影響を包括的に把握し、追加の対策が必要なエリアを特定することができます。
検証機関は、プロジェクトを検証する際、衛星技術が提供する公平で信頼できるデータを用いて、報告された情報の正確さを裏付け、現地での検証が必要なエリアを特定し、最終的に検証の時間とコストを削減することができます。さらに、プロジェクトのインパクトを継続的に追跡することもできるようになります。
<参照情報>
From Space to the Sea: The Importance of Satellite Data in Blue Carbon Projects
https://blueskyhq.io/blog/from-space-to-the-sea-the-importance-of-satellite-data-in-blue-carbon-projects