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2023.08.18
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英国政府「高度海洋保護区」の指定を発表 ブルーカーボン生態系の回復も視野

英国政府は、2023年2月28日、3つの海域を2023年7月までに「高度海洋保護区」に指定することを発表しました。

「高度海洋保護区」は、保護海域内の漁業や建設、浚渫など有害な活動をすべて禁止することで、生物多様性を育み、気候変動に対してレジリエンスの高い豊かな生態系の形成を支援します。従来の海洋保護区では、厳しい条件付きとはいえ、海洋の利用が可能です。それに対して、高度海洋保護区ではエリア全体を完全に保護するアプローチが取られます。海域内のすべての生息域と種を保護することで、生態系を本来あるべき状態に回復させることが可能になります。

今回指定されるのは、アロンビー湾(アイルランド海)、ドルフィンヘッド(英国海峡東部)、ファーンズ・ディープの北東(北海北部)です。選定にあたっては、その海域の自然の回復に対する生態学的重要性が考慮されました。

アロンビー湾(アイルランド海)
アロンビー湾には、炭素を吸収・貯蔵する「ブルーカーボン」生態系の生息地があります。また、蜂の巣状の礁やヨーロッパイガイの群生地もあり、水質浄化や海岸浸食からの保護に役立っています。タラ、ツノガレイ、シタビラメ、ニシンなど、さまざまな商業魚の生育・産卵のための生息地も保護される予定です。

ドルフィンヘッド(英国海峡東部)
ドルフィンヘッドは、人間の活動の影響で劣化が進んでいるため、高度海洋保護区への指定により、生息地と種を完全に回復する機会を得ます。タラ、ニシン、ツノガレイなど多くの重要な商業魚の餌場と生育地、ロスワームによる礁など生態学的に重要な生息地を守るのに役立ちます。

ファーンズ・ディープの北東(北海北部)
ファーンズ・ディープの北東海域は、豊かな生物多様性を有しています。広大な泥質の生息地は、鳥類、海洋哺乳類、魚類などの種にとってだけではなく、炭素の貯蔵にとっても重要です。この海域には、アンコウ、ホワイティング、ハドックなど、商業的に重要な最大十種の産卵と生育のための生息地があります。

今回指定される高度海洋保護区には、沿岸も沖合も含まれ、英国海域の40%をカバーする既存の海洋保護区のネットワークを補完します。


<参照情報>
GOV.UK., Highly Protected Marine Areas to be designated in English waters
https://www.gov.uk/government/news/highly-protected-marine-areas-to-be-designated-in-english-waters

GOV.UK., Benyon review Into Highly Protected Marine Areas: Final report - executive summary
https://www.gov.uk/government/publications/highly-protected-marine-areas-hpmas-review-2019/benyon-review-into-highly-protected-marine-areas-final-report-executive-summary

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