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2023.09.25
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シンガポールの植物園ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、炭素隔離に関する研究結果を受けて人口湿地を新設

シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイは2023年7月20日、2027年のオープンを目指して開発が進められている同園内のベイ・イースト・ガーデンで、新設の湿地生息地をさらに拡大し、より多様なマングローブ種を栽培する予定だと発表しました。人工湿地におけるマングローブの炭素隔離能力に関する初の公開研究で、前向きな結果が出たことを受けた形です。

ベイ・イースト・ガーデンの湿地生息地は面積が5,148平方メートルあり、生物多様性を高めるための生息地を充実させるとともに、自然をベースとした都市型の気候変動対策への地元コミュニティの参加を促進するという、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの取り組みの一環として設置されました。

都市環境における人工湿地の可能性

このパイロット研究は、2022年1月から12月にかけて、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ初の湿地生息地であるキングフィッシャー湿地で実施されました。デンマーク水利・環境研究所(DHI)が実施し、NUS Centre for Nature-based Climate Solutions 、テマセク、SG Eco Fund の支援を受けています。

この研究では、沿岸の塩水または汽水域で生育するマングローブの種が、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの淡水域でも順調に生育することが確認されました。また、同ガーデン内キングフィッシャー湿地の池の堆積物は、同国内の自然の「ブルーカーボン」生態系よりも炭素含有量が高いことが示されました。さらにモニタリング期間中、キングフィッシャー湿地に植林されたマングローブが隔離した炭素は、植物の成長につれて増加し、炭素排出の抑制に貢献しています。こうした研究結果は、人工湿地が、都市における炭素回収を実現できる場所である可能性を示しています。

またその1年間の研究期間に、DHIの生態学者はキングフィッシャー湿地の生物多様性をモニタリングし、地域の絶滅危惧種を含む合計65種の動物相を記録しました。これらの観察から、人工の湿地でも豊富な生物多様性を育める可能性があることがわかりました。これが、ベイ・イースト・ガーデンに湿地生息地を設置するもう1つの目的です。

人工湿地は、生物多様性の保護とともに、気候変動に対する都市のレジリエンスを向上させることができる、将来性の高い自然ベースの気候解決策であると同ガーデンは考えています。

ベイ・イースト・ガーデンは、完成後は過去と未来の2つのゾーンに分かれる予定ですが、湿地帯の中心は未来ゾーンにあるバイオフィリック・ポンドです。研究で前向きな結果が確認できたことから、マングローブの植栽に充てられる面積は当初の計画の2倍になる予定です。植林エリアには、研究の結果、人工的な湿地帯で順調に生育することが確認されたマングローブの種が植えられる予定です。

ベイ・イースト・ガーデンの湿地生息地は、一般市民がマングローブの重要性についてより深く学べるよう、地域社会との関わりを深めるプラットフォームにもなります。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイは、このマングローブを含む景観の植栽に市民を参加させる計画も立てています。


< 参照情報>
シンガポールの植物園ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、人工湿地における炭素隔離に関する初の公開研究の結果を活用した新しい湿地生息地をベイ・イースト・ガーデンに設置
https://www.gardensbythebay.com.sg/en/about-us/media-room/2023.html#accordion-24a9d4bf40-item-e80a8d7944

ブルーカーボンに関する取り組み事例