南オーストラリア州のアデレード大学は2022年6月30日、アデレード大学、南オーストラリア研究・開発研究所(SARDI)、一次産業及び地域省(PIRSA)の研究部門が関与するプロジェクトの一環として、アデレード北部のセント・ヴィンセント湾で20haの海草藻場を復元することを発表しました。
SARDIの水圏科学部門で海洋生態系のプログラムの環境評価・復元に関するサブプログラムのリーダーを務めるJason Tanner准教授は、SARDIが20年にわたって開発してきた費用対効果の高い技術を土台とする同プロジェクトについて、次のように説明しています。
同プロジェクトでは、冬の間、生分解性のヘシアン(厚手の粗い麻布)でできた、約10万袋のサンドバッグを海底に沈めることによって、wire weed(針金のような茎を持ち、海底の砂地に根と茎を這わせて藻場を形成する海草)の種子を自然にサンドバッグに付着させることができます。サンドバッグは、安定した環境を提供して海底の砂の動きを抑制し、種子を定着させた後、生分解されます。サンドバッグがなかったら、種子が付着する場所はほとんどなく、定着した種子があったとしても嵐で流されてしまいます。
このアプローチは、ダイバーが不要で、直接海草を植え付けるコストを含む、これまでの復元技術にかかるコストの10%未満で実施することができ、さらには、残存している藻場のかく乱を防ぎ、そこから植え付けに必要な原料を得ることができます。
tape weed(テープ状の葉を持ち、海底に根と茎を這わせて藻場を形成する海草)の種子を、夏の結実期間を過ぎてから、海底に沈める前にサンドバッグの中に予め植え付けておくこともできます。
このエリアは、過去60~80年間、水質の悪化が原因で、広範囲にわたって海草を失ってきました。水質が改善してきている一方で、海草の自然な回復は、限定的な兆候しか見られません。その主な原因は、海草がいったん失われると、堆積物が安定せず、コロニーを再形成する海草の能力が制限されるためです。
同プロジェクトで生態系の機能と炭素回収の分野を率いるアデレード大学の講師Alice Jones博士は、「このプロジェクトが確立すれば、復元した箇所が動物相の生息地として、およびブルーカーボンの蓄積において、いかに効果的に機能するかについて検証するものになるでしょう」と語っています。
<参照情報>
Blue Carbon funding secures seagrass restoration in Gulf St Vincent
https://www.adelaide.edu.au/newsroom/news/list/2022/06/30/blue-carbon-funding-secures-seagrass-restoration-in-gulf-st-vincent