ニュージーランド国立大気水圏研究所(NIWA)は2023年2月20日、海洋環境での自然のケルプによる炭素隔離に対して、ニュージーランド初の国の評価を得ることを目指す、Blue Carbon Servicesとの共同研究プロジェクトについて発表しました。
ケルプのブルーカーボンを定量化するこのプロジェクトでは、ニュージーランドの炭素排出量のオフセットにおいて、深海のケルプが果たすあらゆる役割をさらに深く把握していきます。
一般的なケルプ床の1haごとの平均二酸化炭素吸収量は、年間約28トンですが、ニュージーランド原産のジャイアントケルプの場合は、約52トンです。
高精度の推定によると、ケルプによって吸収された炭素の約11%は、何千年もの間、深海堆積物内で隔離される可能性がありますが、ニュージーランドでは、沿岸近くまで広がる海底峡谷を通じて深海につながっているため、この数字はさらに高くなると考えられています。
同プロジェクトの科学部門のリーダーでNIWAの海洋地質学者・生物地球化学者であるScott Nodder博士は「私たちはこの仮説の調査を提案しています。ニュージーランドには豊かなケルプ床があり、隣接する深い海底峡谷によって、それぞれの場所に生えているケルプのバイオマスが沿岸から深海へと運ばれている可能性があるのです」と述べています。
研究者たちは、海表面から最大水深までの水柱環境および海洋堆積物内で、ケルプが吸収した炭素について測定する予定です。
また、ケルプ床の分布、その生産性の割合、海流、海底地形のデータを得ることによって、ニュージーランド周辺で、運搬の全体像や、堆積物内にあるケルプが吸収した炭素の自然の隔離率を推定することができます。
さらに、今までにない劣化実験と現場でのサンプル抽出を重視することによって、同国のケルプによるブルーカーボンの隔離の可能性に関する国のインベントリ創出を目指す、さらに大規模な調査研究プロジェクトへの最初の一歩を踏み出すことができます。
このプロジェクトのすべての結果から、ケルプによって隔離された炭素を国家炭素予算に組み入れ、将来的には炭素市場でも扱われるようになるために必要なデータを得られるため、同国の実質ゼロ排出に向けた動きの後押しとなるでしょう。
<参照情報>
Research aims to quantify New Zealand’s Blue Carbon capacity of kelp seaweeds
https://niwa.co.nz/news/research-aims-to-quantify-new-zealands-blue-carbon-capacity-of-kelp-seaweeds