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2023.12.28
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海洋パネル、海洋を基盤とする気候行動がGHG排出削減に貢献する可能性を報告

The Ocean as a Solution to Climate Change: Updated Opportunities for Action

持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(海洋パネル)は2023年9月20日、新しい報告書「The Ocean as a Solution to Climate Change: Updated Opportunities for Action(気候変動の解決策としての海洋:行動のための機会 アップデート版)」を発表しました。同報告書によると、すぐに実施可能な海洋に関する解決策によって、2050年までに気温上昇を1.5℃以内に抑えるために必要な温室効果ガス排出削減量の最大35%を達成できる可能性があります。

同報告書は、最新の科学と知見を確認し、海洋を基盤とする以下の7つの部門が、気候変動による最悪の影響を抑制するための解決策をもたらす可能性を評価しています。そうした解決策は、持続可能な海洋経済の発展に寄与するとともに、沿岸コミュニティを嵐から守り、雇用を提供し、食料供給の安定性を改善するものです。

  • 海洋を基盤とする再生可能エネルギーの規模の拡大
  • 海洋を基盤とする輸送の脱炭素化
  • 沿岸・海洋生態系の保護・復元
  • 海産の低炭素食料の活用
  • 海洋のCO2除去および海底下の炭素回収・炭素貯留
  • 海洋を基盤とする観光の低炭素化
  • 海洋での石油・ガス採掘の削減

同報告書は、持続可能な海洋に関する解決策への資金供給が極めて少ない現状を踏まえ、世界の指導者たちはこの喫緊の問題に今すぐ取り組むべきだと警告しています。海洋による排出削減の可能性を十分に活かすためには、2030~2050年の間に、こうした解決策に対して、的を絞った2兆米ドルの投資を世界全体で行っていく必要があります。

ブルーカーボン生態系の保護・復元・持続可能な管理のための行動を拡大すれば、2050年にはCO2換算で年間最大0.285ギガトン(GtCO2e)の排出量(約76基の石炭火力発電所の年間CO2排出量に相当)を防止または削減できる可能性があります。ブルーカーボン生態系は、数多くのコベネフィットを生み出すことから、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、生物の多様性に関する条約(「30 by 30」を含む)、持続可能な開発目標(SDGs)の下で、世界全体の目標およびコミットメントを達成するために不可欠なものです。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「2023年の夏は観測史上最も暑く、海水温もこれまでの最高に達したことを考慮すれば、海洋を基盤とする意欲的な気候行動は、かつてなく重要になっています。海洋パネルが、気候危機への取り組みとさらに持続可能でレジリエンスのある世界の構築を後押しするために海洋の可能性を最大限に活用するという、すべての政府による力強いコミットメントの重要性を強調していることを称賛します」と述べています。


<参照情報>
RELEASE: Ocean-based Climate Action Could Deliver Up to 35% of Emission Cuts Needed to Limit Temperature
https://www.wri.org/news/release-ocean-based-climate-action-could-deliver-35-emission-cuts-needed-limit-temperature

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