Initiatives

日本・世界の取り組み
2025.02.12
Share x facebook

世界のマングローブの現状について知っておくべき5つのこと

The State of the World’s Mangroves 2024

国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)は2024年8月21日、マングローブ生態系の保護・再生のための団結に取り組むGlobal Mangrove Allianceによる報告書The State of the World’s Mangroves 2024(仮訳:2024年版「世界のマングローブの状況」)から、知っておくべき5つのことを発表しました。この報告書は、極めて重要な生息地であるマングローブが「どれ程かけがえのないものであるか」と同時に、「いかに脆弱化が進んでいるか」について強調しています。

1. マングローブは豊かな炭素の貯留場所である。

マングローブは、たった1haで平均394トンの炭素を貯留することができます。つまり、平均6トンのアフリカゾウ約65頭分の体重に等しい炭素を貯留しているということです。中にはフィリピンのように、この数字が1haあたり650トンに上る地域もあります。このように膨大な炭素貯留能力を持つマングローブは、CO2を自然に回収・貯留することによって気候変動と闘う上で、不可欠なものです。

2. 世界全体でマングローブが失われるペースは落ちているが、止まってはいない。

マングローブの保護の取り組みによる進歩は見られますが、世界全体で失われるペースが遅くなっても大規模な喪失は続いています。たった20年間で、世界はルクセンブルクとほぼ同じ面積の約2,839平方キロメートルのマングローブ林を失いました。つまり、マングローブの年間の喪失の割合は44%低下していることにはなりますが、今なお養殖などの人間活動による重大な脅威に直面している上に、海面上昇のような抗えない事象による負荷も受け続けています。

3. マングローブは災害から沿岸コミュニティを守っている。

マングローブは、気候変動によってさらに頻発している極端な気象事象に対して、自然のバッファの役割を果たします。調査研究によると、マングローブは嵐の際、浸水深を15~20%減らすことができ、地域によっては、この防護効果が70%を超えるところもあります。マングローブは、高潮を吸収し、海面と陸地が接する汀線を固定し、特にサイクロンなどに対して脆弱な沿岸コミュニティにとっては不可欠な防護策となります。これにより、命を救い、物的被害を軽減し、経済的損失を最小化することができます。

4. マングローブは世界の食料安全保障を支えている。

マングローブは世界の食料安全保障において重要な役割を担っており、毎年8000億近くもの魚やエビ、カニの自然の生育場所として機能しています。こうした生態系は、漁業を維持する上で極めて重要であり、地元の生計と世界の海産物市場の両方を支えています。マングローブは水産資源に加えて、ハチミツや果物、薬用の葉といったほかの食物も提供しています。また年間を通して、こうした資源を確実に供給することにより、沿岸コミュニティの安定した収入源も維持しています。

5. マングローブ再生の取り組みは拡大しているが、危険度も大きくなっている。

コミュニティ主導の取り組みは大きな進展を遂げており、マングローブの再生は勢いが増しています。しかし、世界のマングローブ地域のおよそ半分は、今なお脅威にさらされており、8カ所のマングローブ地域が絶滅危惧IB類または絶滅危惧IA類に分類されています。再生の観点では、最初に行う最善の対処法は保護することであるため、マングローブは長期的に守られることになります。しかし、海面上昇とさらに激しさを増す嵐が危険を増幅しており、再生の取り組みへの負荷が増しています。マングローブの保護と再生を拡大し、持続可能な管理活動を実践するには、世界全体で協働する必要があります。

<参照情報>
5 Things You Need to Know About the Current State of the World's Mangroves
https://unu.edu/ehs/series/5-things-you-need-know-about-current-state-worlds-mangroves

ブルーカーボンに関する取り組み事例