
オーストラリア・クイーンズ州のサンシャインコースト市議会は、2024年9月12日、国内初となるブルーカーボンによるカーボンファーミングプロジェクト「ブルー・ハート・サンシャインコースト(Blue Heart Sunshine Coast)」の第一段階が完了したと発表しました。本プロジェクトは、オーストラリア政府のクリーンエネルギー規制局によって正式に登録された、国内初のブルーカーボンプロジェクトです。
工事は、マルーチー川下流のリバー・ロード敷地で実施されました。老朽化していた潮止堰二カ所を撤去したことにより、潮汐水が土地に再び流れ込むようになりました。これにより、この土地は今後数年をかけて自然に塩性湿地へと移行すると見られており、すでに魚やマングローブの種子が流入するなど、生態系の変化が始まっています。
このプロジェクトは、気候変動に伴う海面上昇による浸水の増加に対応する適応策の一環としても位置づけられており、公共地の変化を継続的に観察しながら、地域に多面的な恩恵をもたらすことを目的としています。
議会は、本プロジェクトがもたらす主な利点として、次の点を挙げています。
- マルーチー川の水質改善および魚類の繁殖域の拡大による生態系の健全化
- 地域住民にとっての自然とのふれあいや新たなレクリエーションの場の提供
- 洪水貯水機能の確保と公共・私有財産の保護
- 絶滅危惧種を含む生物多様性を支える生息環境の創出
- 土地所有者にとっての将来的な新たな収入源の可能性の創出
- 2041年のネットゼロ達成目標に向けた、温室効果ガス排出のオフセットへの貢献
ブルーカーボンとは、海草、塩性湿地、マングローブなどの海岸生態系に蓄積される炭素のことです。これらの生態系を再生・保全することで、「オーストラリア炭素クレジット単位(ACCU)」が発行されます。このクレジットは、政府や企業が排出削減義務を達成するための手段として活用できます。
本プロジェクトは、オーストラリア連邦の気候変動・エネルギー・環境・水資源省から203万6000豪ドルの資金提供を受けており、先住民族であるカビ・カビ族の助言と立ち会いのもと、文化遺産の保護も行われています。
今後は、ヤンディナ=クーラム道路付近において、第2試験地での作業が数週間以内に開始される予定です。
<参照情報>
Wetlands transition begins in groundbreaking blue carbon trial
https://oursc.com.au/environment/wetlands-transition-begins-in-groundbreaking-blue-carbon-trial