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2025.05.29
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植林されたマングローブ林、20~40年で自然のマングローブ林の75%の炭素を隔離可能

Photo by Colin and Sarah Northway is licensed under CC BY 2.0

ドイツのライプニッツ熱帯海洋研究センター(ZMT)は2024年7月19日、米国森林局(USFS)主導による国際研究チームが植林されたマングローブ林の再生の可能性を調査し、その研究結果が科学誌『Science Advances』に掲載されたことを発表しました。

同センターも参加した12カ国の研究者らによるこの国際チームは、植林されたマングローブ林が自然のマングローブ林と同等の炭素貯留量を持つようになるのか、またそれにはどれくらいの年月がかかるのかを調査しました。

これまでの測定データや科学論文など過去40年間の膨大なデータを分析し、地上および地下(根、茎、枝、葉)のバイオマスおよび堆積物に含まれる炭素の量を、植林されたマングローブと自然のマングローブで比較しました。さらに、世界的・地域別の傾向や、種ごとの違いが与える重要性や影響にも着目しました。

主な研究結果は以下のとおりです:

  • 地上・地下のバイオマスは、初期に急速かつ指数関数的に増加する
  • 植林から20年後には、自然のマングローブ林が隔離する約70%の炭素を貯留し、この値は植林後40年までほとんど変化しない
  • 単一種よりも複数の種が混在するマングローブ林の方が多くの炭素を貯留する
  • 中には例外もあり、リゾフォラ属(ヤエヤマヒルギ)は40年後には自然のマングローブよりも多くの炭素を隔離している

土壌中(深さ1メートルまで)の炭素貯留に関する結果は以下のとおりです:

  • 植林初期では、土壌中の炭素量は自然のマングローブ林の約半分程度
  • 5年後には、自然のマングローブ林の約75%に達し、植林後40年間ほとんど変化しない
  • 種の違いによる土壌中の炭素貯留に有意な差異は見られない

こうした結果を受けて、ZMTの生態生物地球化学研究グループの責任者であり共著者でもあるティム・イェンナージャン氏は、植林されたマングローブは、20~40年で自然のマングローブ林の炭素貯留量の4分の3に達することから、気候保護に大きく貢献する可能性があると語っています。

しかしながら、研究者らは植林が自然林保護の代替や補完になるものではないとも強調しています。

「我々のモデルによれば、マングローブの再植林に適したすべて地域で植林を行っても、その20年間の累積吸収量は、ある1年の世界全体のCO2排出量の1%未満しかなりません。従って、既存の手つかずのマングローブ林を保全することが最優先です」と、同研究の筆頭著者であるUSFSのカリーヌ・ブルジョワ氏は述べています。

それでも今回の研究は、植林されたマングローブ林が自然のマングローブ林と同程度の炭素貯留量に到達するまでの期間に関する重要な知見を提供しているとしています。混合種による植林が有効的であることも明らかとなり、中でもリゾフォラ属のマングローブは炭素貯留量の増加速度が速いため、植林の構成に含めるべきだとしています。

<参照情報>
International study: Planted mangroves store 75% of the carbon of intact mangrove stands after 20 to 40 years
https://www.leibniz-zmt.de/en/news-at-zmt/news/news-archive/international-study-planted-mangroves-store-75-of-the-carbon-of-intact-mangrove-stands-after-20-to-40-years.html

Four decades of data indicate that planted mangroves stored up to 75% of the carbon stocks found in intact mature stands
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adk5430

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