オーストラリアのサザンクロス大学を中心とする国際研究チームは2023年5月23日、「沿岸生態系は温室効果ガスの正味の吸収源である」という研究結果を発表しました。
発表された世界10カ所の主要な地域における温室効果ガス予算によると、世界の沿岸生態系は二酸化炭素(CO2)の吸収源である一方で、メタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)の排出源にもなっており、CO2の吸収を一部相殺していることが示されました。しかし、3つの温室効果ガスすべてを考慮した場合、10地域のうち8地域が温室効果ガスの正味吸収源となっています。
研究では、世界中で沿岸地域が、CO2、CH4、N2Oの吸収・排出源として高い多様性を有していることを明らかになりました。東南アジアが最も強力な沿岸温室効果ガス吸収源であり、沿岸湿地帯の広範なマングローブ林や海草がCO2の吸収に大きく寄与しています。
2位の北米はフィヨルドもCO2を多く取り込んでいます。3位のアフリカは、CO2の吸収量は大きいものの、河口域における他の温室効果ガス(CH4、N2O)の排出により、やや減少しています。その一方で、ヨーロッパとロシアは、両地域とも寒冷のためマングローブ林などの塩性湿地が少なく、河口域での他の温室効果ガスの排出量がCO2の吸収量よりも上回る結果になっています。
研究者たちは、沿岸生態系における温室効果ガスの放出・吸収のメカニズムを理解することが、効果的な気候変動対策のための重要なステップであると強調しています。また、マングローブや塩性湿地などの生息地を保護・復元することが、二酸化炭素の吸収を強化するための有望な戦略であると述べています。さらに、栄養塩や有機物の投入を減らすなどの人間の影響を抑制する活動によって、CH4とN2Oの排出量を削減することも重要です。
この研究結果は、地球全体の沿岸地域における温室効果ガス予算を確立するための取り組みであるグローバル・カーボン・プロジェクトのRECCAP-2にも反映される予定です。
<参照情報>
Coastal ecosystems are a net greenhouse gas sink, new research shows
https://www.scu.edu.au/engage/news/latest-news/2023/coastal-ecosystems-are-a-net-greenhouse-gas-sink-new-research-shows.php