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2024.05.02
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英国コーンウォール、ブルーカーボンの現状を把握し、その保護や投資拡大に役立つプロジェクトを完了

Kelp forest and blue mussel bed, Cornwall by Natural England is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

英国のコーンウォール議会は2024年1月、Blue Natural Capital Project(仮訳:海の自然資本プロジェクト)の完了を発表しました。

英国政府による自然環境投資準備基金(NEIRF)が出資したこのプロジェクトは、コーンウォールのブルーカーボン生息地の規模と健全性をさらに明確に把握するために、これまで限定的だった知識を拡大しました。また、同地域の自然資本への民間投資を生み出す選択肢について情報を提供するために、エビデンスのベースラインを作成しました。

プロジェクトの実施結果

  • ベースラインの作成:コーンウォールの重要な沿岸地域であるファル川・ヘルフォード川河口域(Fal and Helford Estuary)とマウント湾で、ケルプ、maerl(ゆっくりと成長し海底にカーペット状に広がるサンゴのような硬い紅藻類)、塩性湿地、海草の炭素貯留量を把握するための調査および分析を実施。
  • モデリング:上記の主要な2カ所で、ブルーカーボン生息地の復元の可能性についてモデリングを実施するとともに、自然資本と生態系サービスのリスク評価を完了。
  • 投資:ベースラインとモデリング調査の結果による知識を用いて、コーンウォールの海洋環境への投資拡大を目的とした選択肢の開発について情報を提供。

調査研究で明らかになったこと

  • ファル川・ヘルフォード川河口域には880haにわたってmaerlが生育しています。ファル川河口域で発見されたmaerlは有機炭素が豊富だったため、maerlの藻場が数百年から数千年もの間、大量のブルーカーボンを貯留している可能性があるという見解の裏付けとなりました。
  • マウント湾で、新たに5㎞にわたり290haを覆う海草藻場が発見されました。
  • ファル川・ヘルフォード川特別保全地区(Fal and Helford Special Area of Conservation)の境界の外側に26haもの塩性湿地があります。それに結び付くブルーカーボンの価値と予測される海面上昇による将来的な負荷を考慮すると、この塩性湿地を保護する必要があります。
  • 過剰な栄養流出やボート遊び、濁度の上昇が、コーンウォールのブルーカーボン生息地の将来的な健全性と機能に影響する非常に大きなリスクとして挙げられました。
  • ファル川・ヘルフォード川河口域特別保全地区(F al & Helford Estuaries SAC)に広がるmaerlの生育地が吸収する総炭素量は、年間CO2換算266トンと推定されています。これは自動車が約70万マイル走行する際に排出する量に相当します。その50年分の現在価値は239万ポンドです。このmaerlによる炭素吸収量は、海草も含むほかのブルーカーボン生息地よりも多くなっています。
  • コーンウォールで生物多様性や生態系サービスの公式なクレジット制度を設定するのは、さらなる科学的知識が必要なので、すぐには不可能かもしれませんが、慈善投資など、直ちにプロジェクトへの投資が可能になる方法もあります。

同プロジェクトによる情報は、以下の場合に役立ちます。

  • ブルーカーボンに関する調査研究の次の段階(個々の生息地だけでなく生態系全体での炭素の価値の検討など)に進む場合。
  • 国のブルーカーボンに関する政策およびプロセスの開発を支援する場合。
  • イニシアチブを通してコーンウォールの海洋環境に対する民間投資の選択肢について情報提供する場合。
  • ブルーカーボン生息地があるエリアの復元・増大を目的とする地元の新しいプロジェクト(停泊禁止区域の設定など)を指導する場合。

<参照情報>
Blue Carbon | Cornwall Council
https://letstalk.cornwall.gov.uk/bluecarbon

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