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2024.05.17
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ROLEXとナショナルジオグラフィック:アマゾン川の手つかずのマングローブを調査

"Rio Urubu Flooded Forest" by Katja Schulz is licensed under CC BY 2.0

世界最大の流域面積を有し、「地球の肺」とも言われる熱帯雨林を有するアマゾン川流域も近年、気候変動や森林伐採の脅威にさらされ、その保護に向けて世界的な取り組みが進められています。しかしこれまで、アマゾン川河口の広大なマングローブ林は調査も研究もほとんどされてこなかったということです。

この状況を変えようと、環境課題に取り組む人々を支援する「Perpetual Planet Initiative(永遠の地球イニシアチブ)」を展開するスイスの時計メーカーRolexと、米非営利団体ナショナルジオグラフィック協会が協力し、2022年4月マングローブ林の調査に乗り出しました。

2年に及ぶ調査を経て、同社らは「ブラジルのマングローブ林は気候変動緩和の可能性を秘めながらも生かされていない」、そして「これを保護することで同国の排出量削減目標の達成に貢献する可能性がある」として、この調査結果を2024年3月4日付で学術雑誌Nature Communicationsに発表しました。

研究によると、マングローブ林1haあたり推定468.3tの炭素が隔離されており、高地の生物群系のそれに比べておよそ3~20倍としています。そのため、ブラジルのマングローブ林をパリ協定における同国のNDC(国が決定する貢献)に含めることが非常に重要であるとし、さらにREDD+(途上国での森林分野の温室効果ガス排出削減努力等を評価しインセンティブを付与する仕組み)イニシアチブを活用すれば、自主的炭素クレジットとしても利用できるとしています。

ブルーカーボンの貯蔵庫であるマングローブ林を保護することは、ブラジルの排出量削減目標達成への鍵となるだけでなく、経済的な利益をもたらす可能性もあるとしています。REDD+の下では、10年間(2020~2030年)で約1,150±0.11万tの炭素クレジットを創出する可能性があり、これは林業セクターからの排出緩和や生物多様性保全のための資金調達において非常に価値があることを示しているとしています。

そのマングローブ林の宝庫としても世界第2位の大きさを有しながら、現在同国のREDD+戦略には、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)に基づく排出量削減に応じた資金供与(result-based payments)の対象として、マングローブ林の減少の緩和が含まれていません。

その理由として、広大な高地の生物群系(850Mha以上)と比べるとその面積が約1Mha(10,000㎢)と限られていること、そして熱帯雨林と比較した場合、その高い炭素貯留量が認識されていなかったことが考えられるとしています。

研究チームは、マングローブの潜在的効果の理解を深めるために190か所以上のマングローブ林の区画から得られた900の土壌サンプルと木を測定し、河口近辺で手つかずや伐採されたエリアの炭素貯留量を測定しました。

「我々の研究結果では、たった1haのマングローブ林の損失を緩和するだけで、100ha以上に相当する高地の二次林からの炭素排出を回避していることになる。ブラジルのアマゾン生物群系で、マングローブの伐採を止めれば、毎年20万台以上に相当するガソリン車からの排出量を回避することになるだろう」と、論文の主執筆者であるAngelo F. Bernardino氏は語っています。

また、ナショナルジオグラフィック協会の科学・イノベーションプログラム副代表のNicole Alexiev氏は、「この研究による画期的な発見は、気候変動を緩和するための自然に基づく解決策としてマングローブが果たす重要な役割と、マングローブを確実に保護することの重要性を示している」と述べました。


<参照情報>
National Geographic
Brazil’s mangrove forests represent untapped blue carbon banks, says new study from National Geographic Explorers
https://news.nationalgeographic.org/brazils-mangrove-forests-represent-untapped-blue-carbon-banks-says-new-study-from-national-geographic-explorers/

ROLEX
PERPETUAL PLANET INITIATIVE
https://newsroom.rolex.com/world-of-rolex/perpetual-planet

Nature Communications
The inclusion of Amazon mangroves in Brazil’s REDD+ program
https://www.nature.com/articles/s41467-024-45459-w

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